検証・ベビーカー論争はなぜ起きた?

 「女性学」という学問はあるけれど、あえて「女子学」を掲げるイベント、「『女子学』サミット春の陣 ~今、そこにある女子問題語ります~」が開催されました(2013年4月22日、阿佐ヶ谷ロフトAにて)。女子にまつわる様々な問題をとりあげ、出演者が独自の目線で“今”を語り尽くすという、画期的なイベントです。

 白熱した議論を繰り広げたのは、白河桃子さん(少子化ジャーナリスト)、水無田気流さん(詩人・社会学者)、西森路代さん(ライター)に、黒一点の司会進行役として常見陽平さん(人材コンサルタント)。観客は女性だけでなく男性も多数。

 1月に続いて開催2回目となる今回は、「ベビーカー論争はなぜ起きた?」「ゆるく静かな“男子無用論”時代到来?」「ヤンキーちゃんとビッチさんの現在」といったテーマを取り上げ、3時間のサミットは大盛況でした。

 その中から、「ベビーカー論争はなぜ起きた?」について、討論のごく一部をご紹介しましょう。論争を受けて、奇しくも5月20日に国土交通省が「電車・バスのベビーカー乗車の統一ルールをつくる」と協議会立ち上げを発表したばかり。この論争には、様々な問題が含まれているのです。

“ママ叩き”と世代間闘争



鉄道各社で貼られたポスター

2012年に鉄道各社で貼られたポスター。数年前から毎年3月にその年のバージョンが貼られるようになった

常見:そもそも、“ベビーカー論争”とは何か、についてお話いただけますか。

水無田:直接のきっかけは、2012年3月から東京都と私鉄24社が“電車内でのベビーカー利用者に配慮をお願いします”と周囲に呼び掛けるポスターを貼ったことなんですね。それに対して、『電車内のベビーカーは邪魔だ』『母親のマナーが悪いのに、これ以上調子に乗せるな』というような批判が寄せられていると報道され、反論も出て論争になったのが2012年夏。

 実は、これには様々な背景があって、小競り合いは以前から起きていたんですが……。


<ベビーカーをめぐる背景>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆1999年、私鉄9社や都営地下鉄で「ベビーカーは折り畳まずに乗車できる」という方針が示された。2006年“バリアフリー新法”が施行されて、翌年に国土交通省が「公共交通機関でベビーカーを使っている人」を対象に想定した。

◆子連れで満員電車に乗らざるを得ないワーキングマザーが増えている。巨大でゴツい輸入ベビーカーを使う人が増えている。

 そういった色々な背景から「電車内のベビーカーが目につく」ようになって火種化した背景が、水無田さんから説明された。

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水無田:こういう色々な背景があるにもかかわらず、相変わらず“母親叩き”のような形で、2012年夏にベビーカー論争が勃発したわけです。まず産経新聞の「金曜討論」欄(2012年7月13日)で、日本子守唄協会理事長の西舘好子さん(当時71歳)が……。

常見:子守唄協会なんてあるんですね!(笑)

水無田:この西舘さんのインタビューを読むと「最近の母親は公共心がない」「(おんぶのような)育児の伝承を取り戻さなければならない」等々……。西舘さんは「お母さんだけを責めるつもりはない」と言いながらも、「(若いママさんに)女性の劣化を感じる」などと、実質的にはめちゃくちゃ責めているわけです。

常見:ものすごい“もっともらしい感情論”ですね。

水無田:産経新聞では同時に、日菜あこさんという27歳のギャルママモデルの意見も載せています。日菜さんは「ママだから外出を控える世の中ではない」、だっこやおんぶは体力的に大変で、「子供にとって一番大事なのは母親に余裕があること」と。西舘さんと日菜さんの意見は完全に食い違っているわけです。

常見:世代間闘争ですね。71歳と27歳じゃお祖母ちゃんと孫ぐらい違いますからね。

水無田:この西舘好子さんって、井上ひさしさんの夫人だった方ですね。劇団「こまつ座」のプロデューサーをやっていて、舞台監督と不倫して、「自分に正直に生きたい」と言って井上ひさしさんを捨てて雄々しく家を出られた方なんです。その方がこういうことを言うとは、時代は変わったものだな、と思ったわけですが(笑)。

女子学サミット

左から水無田さん、西森さん、白河さん、常見さん

ベビーカーの巨大化、働くママの増加



常見:冒頭に戻ると、まずベビーカー利用者に対して社会の対応が変わっている、という前提が共有されてないですよね。この論争を、白河さんはどう見ていましたか?

白河:ツイッターで「ベビーカー邪魔」みたいな感情的なツイートが目立ってましたよね。実際に私も、60代くらいの女性の方々が「私達の世代は、ベビーカーって折りたたむものだったわよねぇ」と話しているのを聞いて、驚きました。今、折りたたまない大型の輸入ベビーカーが増えていますからね。

水無田:そう。ヨーロッパ製のベビーカーは子どもを身の回りの危険から守るという発想で作られているので、大きいしゴツイんです。また男性が持ちやすいようにもできています。でも、この巨大さが「場所を取るから邪魔だ」と言われる原因にもなっています。

白河:それに、現代は共働き世帯が多いので子連れのママさんが電車やバスを使う機会が増えたというのもありますね。近場の保育所に預けられないという問題もあって、混み合った時間に電車に乗らなければならないんです。

(そういうお母さんたちは)すごく重武装して出かけなきゃならない。戦車みたいなベビーカーに必要な物をすべて積んで、「この子は私が守るのよ!」って感じの怖い表情でズンズン歩いているお母さんがいますよね。でも、ママたちがそうなるのって、日本の街や社会自体が“子育てしづらい”環境だからなんですよ。

 欧米でベビーカーを持って階段を上がろうものなら、すぐに誰かが助けてくれますけど、日本ではそうじゃないですしね。 <TEXT/槍田創>

⇒【後編】に続く「子育て女性はマイノリティか”勝ち組”か」
http://joshi-spa.jp/13976


【女子学サミット メンバー】

白河桃子さん●1961年生まれ。会社員を経て文筆家に。『婚活時代』(共著)を始め著書多数、近著に『妊活バイブル』(共著)など。東京女子大等で非常勤講師を務める


水無田気流さん●1970年生まれ。詩人であり社会学者、東京工業大学世界文明センター・フェロー。著書に『音速平和 』『無頼化する女たち』など



西森路代さん●1972年生まれ。会社員を経てフリーライターに。アジア系エンターテインメントなどについて執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』など


常見陽平さん●1974年生まれ。会社員を経て人材コンサルタントに。著書に『女子と就活』(白河さんとの共著)『僕たちはガンダムのジムである』など。実践女子大学などで非常勤講師

イベント, 女子学, 家庭, 恋愛, 育児
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