結婚式はBGM がダサいと最悪。ツウをうならせる選曲集
今年も早いもので、気づけばもう6月。とくればジューンブライド。雨の多い時節柄、日本では敬遠されるむきもあるようですが、言い伝えにあやかるカップルも少なくないのでは?
とはいえ、結婚式には色々な些事がついて回るもの。ゲストの座席表作りから、引き出物や料理のチョイスなどの事務的なことはさておき、意外なところで迷いそうなのが披露宴で使う音楽。検索すれば定番のJポップや洋楽も出てくるけど、やはりよそとは違ったカラーを出したいもの。
というわけで、老婆心ながら一味違った名曲をいくつかご紹介しましょう。
まず新郎新婦の入場。ここでストリングスをふんだんに使ったバラードにしてしまうと後々盛り上げるのに苦労するので、シンプルな編成でいきたいところ。ニーナ・シモンの「Seems I’m Never Tired Lovin’ You」はどうでしょう。
⇒【YouTube】Nina Simone Seems I’m Never Tired of Loving You http://youtu.be/SpyinvizB94
ピアノと歌だけ。ゴスペル風味でありながら、重くなりすぎない。タイトルをざっくり訳すと、“あなたを愛することに飽きるなんて考えられない” せっかくの門出です。ツッコミは不粋というもの。
そして披露宴最大のハイライトといえば、ケーキ入刀。「はじめての共同作業です!」というお決まりのフレーズには、“これからの長い人生、腹くくれよ”との叱咤激励もありそうです。
そんなエールにフィットしそうなのが、ペット・ショップ・ボーイズの「The Survivors」。
⇒【YouTube】Pet Shop Boys – The Survivors
http://youtu.be/KKzGz3qHqew
深い秋から初冬にかけた景色にマッチしそうな曲調に乗せて、<人生に生きる価値があるなら その通り 生きなければならない>と静かに決意を固める。ケーキにほんのりビターな風味が加わります。
式もだんだんクライマックスに近づいてきます。新郎新婦から両家に向けた手紙の朗読もおなじみの光景になりましたが、最近は新郎から新婦にあてたメッセージもあるのだそう。
しかしツッコミは不粋というもの。ですが、気恥ずかしい思いも少なからずありそうです。だとすれば、ちょっと皮肉っぽい曲が助けになるかもしれません。
テキサス出身のカントリーシンガー、ライル・ラヴェットの「Nobody Knows Me」。
⇒【YouTube】Lyle Lovett: Nobody Knows Me http://youtu.be/VQbTRcUbHwY
ジュリア・ロバーツ最初の結婚相手として一瞬有名になった人でもありますが、なによりも実力派のソングライター。特にアコースティックセットによる演奏に抜きん出たものがあります。ピアノとギターがぶつかり合うことなくそれぞれのフレーズを粒立たせる。
<クリーム入りのコーヒーが好き 日曜はうだうだ寝てるのが好き そんな僕のことを一番分かっているかわいい人>
これを流せば手紙を書く必要はないかもしれませんね。
そうこうしているうちに、そろそろお開きの時間。エンドロールで幸せのおすそ分けということで、老若男女に沁みる曲が欲しいところ。03年に惜しくも早世したウォーレン・ジヴォンの「Don’t Let Us Get Sick」。
⇒【YouTube】Warren Zevon – Don’t Let Us Get Sick http://youtu.be/ELe4vC3oM5E
その素晴らしい一節が、こちら。
<The moon has a face And it smiles on the lake And causes the ripples in Time I’m lucky to be here With someone like you Who maketh my spirit to shine>
湖面のさざ波に月が微笑むように映り込む。それを大好きな人と眺める。
同じアルバムで「My Shit’s Fucked Up」などと歌った人の言葉とは思えません。この振れ幅の中で語られる、なんてことのない幸せ。結婚という枠を超えて、静かな余韻を生むこと請け合いです。
<TEXT/音楽批評・石黒隆之>
新郎新婦の入場
ハイライト、ケーキ入刀
照れくさい手紙の朗読タイム
そろそろお開きの時間
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4