結婚に執着して、人生を狂わせた女たちの事件簿
人生において結婚は最も重要な行事です。しかし、重要なゆえに人間の性(さが)や愚かさが現れるのも事実。
『「魔性」の女に美女はいない』(小学館)は、ホラー作家の岩井志麻子が結婚をフックに、実際にあった16の愛憎劇を短編仕立てにしています。
「結婚をフックに、女の強かさ、計算高さ、愚かさ、男のずるさ、短絡的でだらしない幼さなどを描くていこうという趣旨」(序章)の本書には、結婚に執着しすぎて人生を狂わせてしまった女性が多く登場します。
たとえば…
●結婚したいのに、相手を刑事告訴
資産家の息子と自称・松濤育ちのお嬢さま。はじめは仲良く交際していた2人ですが、ある時、彼女は痴話ゲンカの末、暴力を振るわれたと嘘をつき彼を刑事告訴します。その後、彼女は彼の子どもを妊娠、刑事告訴は取り下げないまま結婚を迫ったのです。
しかも、「松濤育ち」をはじめ、経歴はすべて嘘で、顔も整形だったこの女。男への嫌がらせは延々と続き…。
(ケース5)
●お笑い芸人に結婚を迫った元C級アイドル
あるお笑い芸人と元C級アイドルのケース。
一夜だけの関係を持った後、アイドルは妊娠したと言い、男に結婚を迫ります。しかし彼女を調べると、借金で自己破産寸前になった過去が発覚。しかも、ある男と婚約して借金の肩代わりをさせ、入籍寸前に逃げ出していたのです。
この結婚詐欺まがいの女の行く末は…。
(ケース2)
そのほか、「不倫相手の妻だけでなく“恋人”を殺してバラバラにしたお嬢様」(ケース8)、「木嶋佳苗被告と上田美由紀被告」(ケース10)などの凶悪事件も登場。
本の帯にあった「なぜブスほど男を騙せるのか?」については、最後までわからずじまいなのですが…。
さまざまな愛憎劇が書かれている本書を読むと、多くの女性が結婚で「人生が変わる」と考えているように感じます。例にあげた2つのケースも、人生がうまくいっていない、隠したい過去を持っている、という共通点があります。
たしかに、女性が結婚で人生のリセットできることはありえます。でも結婚だけで新しい道が開けると思っているならば、それは浅はかな考えでしょう。本書に出て来る多くの女性たちは、結婚への執着によって、人生を狂わせてしまったように感じられます。
著者の岩井志麻子も離婚・再婚経験がありますが、本書でこれだけ怖いケースを描きながらも、
「結婚していないあなた、一回ぐらいしてみたらどうですか。損ばかりではないですよ」(あとがき)と書いています。
今一度、結婚というものについて考えさせられる一冊です。
<TEXT/舟崎泉美>
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結婚で人生をリセットできるとは限らない
舟崎泉美
1984年生まれ。小説・脚本・ゲームシナリオなどを執筆中。著書に『ほんとうはいないかもしれない彼女へ』(学研、第1回・本にしたい大賞受賞作)
http://izumishiori.web.fc2.com/
『「魔性の女」に美女はいない (小学館新書)』 現在の婚姻制度は、明治時代になって形作られた。「愛し合っているから」という概念が一般化したのは、わずか40数年ほどの歴史しかない。しかし、恋愛結婚が主流となってから、保険金殺人や詐欺など結婚にまつわる様々な事件が発生している。だが、そんな大犯罪ではなくとも、幸せのはずの結婚の裏側では、数々の不幸が日常至るところで起こっているのだ。結婚とは何なのか?ホラー小説の旗手が書き下ろすすべて実話の物語。男は愚かで、女は怖い。 |