パリ在住の日本人が見た「テロ翌日でも普通にすごす」フランス人の覚悟

  世界中にショックを与えたパリでの同時多発テロ(現地時間11月13日夜)。死亡者は129人に上り(15日時点)、非常事態宣言が出されています。いまパリの普通の人たちはどんな状況なのでしょうか?

  女子SPA!連載陣で、パリ在住15年(フランス在住18年)の美容ジャーナリストの岩本麻奈さんに、テロの2日後に電話取材しました。

レピュブリック広場

14日、パリのレピュブリック広場で献花する人たち(ゲッティイメージズ)

意外にも、街はいつも通りだった



「13日の夜は、お友達とできたてほやほやのシャンゼリゼのクリスマス市を視察しておりました。でも街の様子が何だか変だったんですよ。やたらパトカーが多くて覆面警察みたいなのもいっぱいいて、『またテロかな』なんて話していたんです。

 で、夜帰りましたら、子供が青い顔して出迎えて『今パリが大変なことになってる!!』と」

 岩本さんの自宅はセーヌ川左岸のパリ5区で、テロ現場のひとつとなったセーヌ川右岸のバタクラン劇場から3~4キロほどの近さです。

 非常事態宣言が出されているテロ翌日の土曜日は、みんな家にこもっているのかと思いきや、そんなことはなかったそうです。

「私も日本人的な感覚で、みんなある程度はいいつけを守って外に出ないで街はシーンとしてるんだろうと思ったんですね。

 でも我が家では食料が尽きてましたから――いっしょにいる次男三男(21歳、22歳)がすごい食欲で週末はいつも買出しです―― 窓から通りを眺めて、すぐ近くのスーパーが開いていることを確認してからおそるおそる外出したんですね。そうしたら、みないつものように普通に外にいるんです。

  カフェも花屋も土産物屋も普通に営業してて、お茶を飲んでいる人もいるし、パン屋の前のテーブルでいつものようにバゲットを頬ばっている人もいる。

 もちろんテロがあったセーヌ川の右岸は封鎖されているエリアも多いでしょうし、ものものしく警戒されていると思います。ところが、わたくしが住んでいるあたりは事件があったと聞かなければわからないぐらい。

 フランス人ってやはり日本人とは違うメンタリティなのかな、と思いました。特にお年寄りたちは、肝がすわっているというか、キャディをガラガラ引きながら買い物してました」

家に引きこもっていたらテロリストの思うつぼ



 けれどこれには実は別の意味もあったようです。

「『ここで家に引きこもっていたら、それこそテロリストが喜ぶ。我々はテロには屈しない。自分たちは平気だ』というアピールが、この“普段通りの生活”にあったと思います。市民の中にも意識がしっかりと息づいている。
こんな場面でフランス人のエスプリを感じてしまいました」

 とはいえ、パリの人たちが大変なショックを受けているのは間違いありません。 

「当初は、受けた傷が深すぎて、深い悲しみと今後の不安に沈んでいるようでした。そして一日、二日たっていくうちにテロに対する怒りがどんどん増してきているようです。
 わたくしの友人の息子さんは襲撃現場から1分のところにいて、命からがら近くのバーに避難したそうです。その友人は、今は病院で手当を受けているとか。襲撃のあったあたりは若者のたまり場でした。

 戦後のフランスで最大最悪のテロだったわけです。一般市民を多数巻き込んだことで、一月のシャルリー・エブドの事件とはレベルが違うと感じます。
 今回の事件を受け、市民の生活は抑圧され不自由になることも多いと思います。けれど、それでも黙っていてはいけないこと、やらなくてはいけないことに対して、市民は一致団結することでしょう。

 パリの住民の1割がイスラム系で、多くの敬虔なムスリムと、今回のテロの主導者を一緒くたに考えることはできません。

 まだ日が浅くてショックが大きく、判断するのに必要な情報、材料が足りないのです。 短絡的に物事を考え、行動することは危険だと、みんな思っているようです」

「テロはある」という前提で暮らしている



  パリでは、今年1月に出版社「シャルリー・エブド」がイスラム過激派に襲撃されて12人が殺害されていますが、 過去にも、テロやテロ未遂事件が起きています。テロに対する感覚は日本とはかなり違うようです。

「以前からよくパリの友達と話していたのは、『テロがあるか、ないか』ではなくて、『いつあるか』だけの話だね、と。 テロがあるのが当たり前。パリに住むっていうのはそういうことだ、と昔から思っていました。

 1995年にはサン=ミッシェル=ノートルダム駅で爆弾テロがあったし、それ以降も、テロ未遂事件はいくらでもありました。いままでパリが安全だったことなんかない。でも住人は逃げようがないし、覚悟のうえでパリに住んでいるんです」

日本人とはテロの受け止め方が違う



 今回のテロは、今年9月にフランス軍が、IS(イスラム国)を標的にシリアを空爆したことがきっかけだという報道もあります。日本だったら「政府が悪い!」の大合唱になりそうですが……。

「私や子供の周りでは、現段階でそういう声はまったくないです。あくまで今の時点ですよ、これから変わるかもしれませんが。

 きっと政府の対応が引き金だとは、わかってはいるんですよ。だからといって政府の決断に対して攻撃はしない。まだ判断できる情報が足りないこともあります。

 そもそもフランスは人種も宗教も多様な多民族国家ですし、歴史的にいろいろ戦争や侵略が繰り返されておりますし、 テロの危険が常にあることを当たり前と受け止めてます。日本人とは受け止め方の根っこが違うんですね」

<TEXT/女子SPA!編集部>

【岩本麻奈さんプロフィール】
1964年生まれ。皮膚科専門医、一般社団法人日本コスメティック協会代表理事。
東京女子医大卒、慶應大学医学部皮膚科学教室で研修後、済生会中央病院などに勤務。3児の母。97年渡仏し、現在はパリ在住。著書は『女性誌にはゼッタイ書けないコスメの常識』『パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ』など多数 。

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