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たけし・さんま世代のあと、バラエティは成り立つのだろうか?

 あっという間に終わってしまった、年末年始のお休み。久々にゆっくりとテレビを観ていて感じたのは、“はて、今後バラエティ番組というジャンルは成立するのだろうか?”ということでした。40代以下の芸人やタレントが、あまりにも小粒だと改めて痛感したのです。

雑談のもとにある視野の広さ

 たけしや、さんまに鶴瓶、ギリギリでとんねるずあたりまでが、特にお笑いに興味がない人たちも笑わせられる最後の世代なのではないか。暮れやお正月の番組を見比べても、安定感はもちろんのこと、話のもとにある視野の広さが全く違うのですね。

「新春大売り出し!さんまのまんま 30 周年スペシャル」(C)関西テレビ

 とはいうものの、お笑いのレベルそのものは上がっているのだと、たけしは語ります。 「俺らの若いころに比べたら、ネタにしてもみんな上手いよね。そう考えると、俺らは運が良かったのかもしれない」(『新春大売り出し! さんまのまんま30周年スペシャル』1月2日放送より)  と真剣なことを語りつつ、さんまが茶々を入れ、たけしもそれに乗っかりながら、また若い芸人に向けた真面目な話へと軌道修正する。けれども、そんなやり取りを眺めていて、ふと気づいたのが、もしかしたらその“上手い”ことが、昨今のバラエティのつまらなさの遠因なのではないかということでした。  若い芸人のネタやトークが上手いといっても、結局は同年代の同業者や女子中学生あたりにしか通用しない小手先の技術に過ぎないのではないか。そうした目先の稚拙な笑いを、なあなあに分け合うような互助会的な番組が多すぎるのですね。

仲間内コードでの笑い

 そのことを強く感じたのが、『クイズ 正解は一年後』(TBS系 2015年12月30日放送)での有吉弘行でした。その際、一昨年の暮れに結婚の決まっていた元TBSアナウンサーの枡田絵理奈に向かって、<マスパン 中出し 妊娠>と書いたフリップを出した映像が流れたのです(2015年1月に収録した「2015年予想クイズ」の映像)。
正解は一年後

「クイズ 正解は一年後」(C)TBS

 セクハラ云々は置いておいて、この仲間内でしか通用しないコードの中でしか笑いが取れないことが、実にシビアな問題なのですね。そこには、こうした下劣さを許す人間以外の他者がいるという意識がないのです。平たく言えば、常識がないのです。  決して“中出し 妊娠”という言葉自体が悪いのではありません(もしかしたら、悪いかもしれませんが)。自分の仲間以外も観ているという畏れが希薄なことがダダ漏れになっている。それが、一番の問題なのです。  同じようなことは、鶴瓶と小藪千豊が1対1でトークを繰り広げた『ヤブツル』(NHK 昨夏の再放送)にも感じました。小藪の話が通じにくいことを鶴瓶が気にして、何とか“ふつうの”言葉に翻訳しようと気をもんでいる姿が見え隠れ。視聴者みんなが松本人志のコードを理解しているわけではないのですから。

ネタはできても“面白い雑談”ができない?

 つまり、このバラエティの停滞は、お笑いの技術向上と反比例するように、普通の会話が成立しない状況が出来上がっていることによるのではないでしょうか。  ナインティナインの岡村隆史が、作家の伊集院静と対談した際(NHK『いっちょまえ!』 2011年10月8日放送)の、あたふたぶりはショッキングでした。もう何を話していいのか分からないのですね。困ったら「オトナって何ですか?」の連発。異業種の目上の人間と、どのようにすれば雑談が成り立つのか。その手がかりすら持っていない。  毎年恒例になった、『志村&鶴瓶のあぶない交遊録』でナイナイが出演する「英語禁止ボウリング」ですが、年を経るごとにその底の浅さが目について楽しめなくなってきています。  というわけで、このバラエティ・お笑い氷河期は、相当に長引くかもしれないと思う年末年始でした。 <TEXT/沢渡風太>
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