嵐が紅白で着た三陽商会ブランドと、バーバリーの素晴らしいショウ&ライブに思う

 バーバリーと三陽商会とのライセンス契約が終了したのが、2015年の6月。そのため、バーバリーの製品は直営店以外で買うことはできなくなりました。

バーバリーのヘリテージ・トレンチコート。2014年にトレンチがこのモデルに統一された

 バーバリーの看板を借りつつ、若者向け低価格帯のラインナップで利益を上げていた三陽商会が、何にも代え難いブランド名を使う権利を失ったのですから、ダメージの大きさは計り知れません。

嵐が着ていた赤チェックのジャケットは…



 そんな中、三陽商会による後継ブランドとして誕生したのが「クレストブリッジ」です。

クレストブリッジ ブルーレーベル/ブラックレーベル 公式サイト https://www.crestbridge.jp/s/

「ブラックレーベル」に「ブルーレーベル」といったおなじみの名称に、赤を基調としたチェックのデザイン。昨年末の紅白歌合戦のオープニングで嵐が着用して話題になりましたね。PR効果はバツグンだったようで、さて、ここから反転攻勢となるのでしょうか。

(※このジャケットを着た嵐。「クレストブリッジ」クリエイティブディレクター三原康裕氏のinstagram https://www.instagram.com/p/_8-1a-u6k3/

 とはいえ、バーバリーを失った大きな理由が、まさに「ブラックレーベル」や「ブルーレーベル」に象徴されるような商品展開だったというのですから、少し複雑な心境になります。

 バーバリーが新たに打ち出した“デモクラティック・ラグジュアリー”(誰もが着ることのできる素敵な服)というコンセプトにそぐわないと判断されたのでしょう。けれども、親しみやすさを保った一方で、贅沢な雰囲気を醸すのは、なかなか難しそうです。

ショウをライブにするバーバリー



 そこでバーバリーが利用したもののひとつが音楽でした。2010年から始まった「バーバリーアコースティック」では、イギリスの若手ミュージシャンを支援する姿勢を打ち出しています。単に製品を売るだけでなく、その背景にある伝統と文化まで理解してもらう試みなのですね。

⇒【YouTube】’Only Love Can Hurt Like This’ (Live for Burberry) – Paloma Faith http://youtu.be/CWCVaKdUjCw



 さらに、ショウをライブ仕立てにしてネットで配信するのも、音楽は服の添え物ではなく、対等に影響を与えあうコンテンツだと捉えている証なのではないでしょうか。

 こうして洋服のデザインだけでは伝わりずらいポリシーを、アーティストや曲のチョイスによって補っていく。そうして、ブランドの価値を立体的に打ち出しているのです。

 それが見事に結実しているのが、2016年1月に開かれたメンズコレクションにおけるベンジャミン・クレモンタインのパフォーマンスでした。マシンガンのようなピアノに、中性的でありながら野太く艶っぽい声。対面するのはチェロ奏者のみ。シャンソンのようなトーキングブルースが流れる中、モデル達は、ただ歩く。

⇒【YouTube】Benjamin Clementine live at the Burberry Menswear January 2016 show http://youtu.be/HZSZEFUMpz4



 何一つ奇をてらっていないのですが、この組み合わせを実現させること自体に、“ホンモノ”の底知れぬ力を思い知らされるのです。消費を刺激することと、クリエイティビティを発揮することが、気負いなく共存している。

音楽の生きる道



⇒【YouTube】
‘Country Song’ by Jake Bugg – Burberry Acoustic http://youtu.be/b3lyMhOize8




 そしてこれは音楽批評の観点からも、なかなか考えさせられる動画でした。というのも、音楽不況が叫ばれる中、どうすれば商売が成り立つのだろうと考えたときに、そもそも音楽だけで、つまり楽曲の良し悪しやミュージシャンのキャラクターだけで展開するのには、もう限界があるように思うのです。

バーバリー公式サイトの「アコースティック」のタブには、支援したミュージシャンたちの動画が

 音楽から他のジャンルへと興味が派生していき、逆に別の分野から音楽へと還ってくる、そうした多面的なきっかけを作らなければ、ファンやマニア以外は見向きもしなくなるでしょう。もしかしたら、すでにそうなっているのかもしれませんが。

 そこで改めて、“デモクラティック・ラグジュアリー”という言葉を考えると、女子高生やおばさんが「ただバーバリーだから」という理由で身に着けていたようなあり方は、実のところデモクラティックからは、程遠い光景だったのかもしれません。「誰もが着られる」というコンセプトには、(物の価値を大切にする)というフレーズが隠れているはずだからです。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>

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