まず、子供は大人が使っている
“本物”が大好きである。鍵や財布、ケータイなどを好み、その形のおもちゃを与えても見向きもしない。なぜか本物だけを選び抜き、遊ぶのだ。そして、わが息子がどんな玩具よりも大好きなのが、私の“オシゴト七つ道具”の一つであるパソコンである。
息子は私がパソコンを開くと同時に、どの部屋にいてもその音を聞きつけ、ものすごいスピードで近寄ってくる。そしてキーを触り、
なぜかアイコンを大きくし、ローマ字入力をひらがな入力にして去っていく。
なぜだろう。どうして1歳や2歳そこらでその操作方法がわかるのだろうか。そして、いつも私はそれを通常に戻すのに2、30分ほどのロスタイムを味わわなくてはならないのだ。
しかし、今思えばそれはかわいいものだった。
先日、息子の手が届かないところにパソコンを置いて油断していた私がトイレから帰ってきた後、知恵のついた息子は小さな踏み台を使いパソコンを持ち出し、
キーボードから一文字一文字丁寧にキーボタンをはがしていたのだ。その光景はもう、ホラーでしかない。
しかも、締め切りはすぐそこまで来ている。
私はバラバラになったキーボタンを、記憶を頼りに接着剤でくっつけ、非常に打ちづらい状態で半泣きのまま原稿を仕上げたが、この日がトラウマとなり、ノートパソコンはいつも天袋に収納されている。
しかし、これは小さい子供がやること。少し成長すれば、きっと子供の前でも仕事ができるだろうと思っていた。……が、私が甘かった。