「女性に多大な努力を強いる言説」は、基本的に女性を信頼していない。だから「これをしろ」「あれをするな」と指示を出す。これは
「答えはお前の外にある」と言っているのと同じで、自分を“間違っている側”に置いてしまう人は、そのメッセージを内面化してしまった結果だろう。
一方の本書は、ひたすら「自分を見つめろ」と言う。世間の常識や他者の評価は関係ない。とにかく自分自身を見つめ、自分の
「見え方」ではなく
「在り方」について徹底的に考えよと訴える。本書のこの態度は、先とは逆に
「答えは自分の中にある」と言っている。根本のところで、人を信頼しているのだ。ストイックで激しい言葉なのに、むしろ優しさすら帯びているのは、こういった部分に拠るところが大きい。
そして、個人的に圧巻だったのは、女性の大半が怯える「加齢」について語った一節。40代女性として、ホルモンバランスの変化や世の風潮による戸惑いも認めた上で、著者はこう述べる。
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しかし、深く刻まれた目尻の皺は、これまでの人生、よく笑ってきた証拠である。
内面的には幸福が蓄積されていて、その愉快な毎日を雨の日も風の日も守ってくれていた壁の外装が劣化しているわけだから、悲観するよりも、まずは、感謝するべきではないだろうか
※改行は編集部によるもの。
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私自身は男性だが、やはり加齢による身体の変化には強い怯えを感じている。しかし、こんな風に考えることができたら、年齢を重ねるほど自分を慈しめるようになれるのではないかと感じ、気持ちが軽くなった。
厳しさと優しさ、強さと弱さ、男性性と女性性、昭和と平成……などなど、相反する様々な概念を内包しながら毅然と自分を語っていく著者の言葉は、キャラや空気、規範や正解といったものに自らハマり込んでいきがちな現代人の胸に深く突き刺さるはず。ひたすらハイカロリーな本書、ぜひご一読を!
<TEXT/清田隆之(桃山商事)>
【清田隆之 プロフィール】
恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。WEBメディア「日経ウーマン」「messy」、雑誌『精神看護』などでコラムを連載中。桃山商事として著書に『
二軍男子が恋バナはじめました。』がある。★Twitter(
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(恋)桃山商事
恋バナ収集ユニット。失恋ホスト、恋のお悩み相談、傷心旅行のツアーガイド、合コンの企画から恋愛コラムの執筆まで、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナ番組『二軍ラジオ』も更新中! Twitter⇒
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公式サイト <photo/Yuji Namba>