超幸せ! とはいかないまでも、このまま何となくつのだ☆と結婚していくのかな…などと考えていたある日のことである。つのだ☆から突然別れを告げられた。
原因は、私と付き合う直前に別れた元カノである。彼女はつのだ☆に別れを告げたものの、新しい女ができたと知って後悔。今になってヨリを戻して欲しいと懇願してきたそうだ。つのだ☆はその元カノの元に戻るという。
「なんで私じゃダメなのぉ~~~~~」と電話口で号泣しながらすがる私に、つのだ☆はこう言った。
「やっぱさ…
デブ同士って、なんかデートしててもセックスしてても自分たちの姿を想像して笑えちゃうんだよね……」
そのセリフを聞いた瞬間に、私はサーッと冷めた。
いや、それ私も思ってたし。
でも、それ言っちゃったら付き合えないし。周りが見えなくなるくらい好きにならなきゃって使命感あったし。
つーか、あれ? 私別に、つのだ☆のこと好きだったわけじゃなくね? つのだ☆のこと好きになろうとしてただけじゃね??
その後は驚くほどアッサリと私は身を引き、つのだ☆とはそれっきりである。
結論。私にぽっちゃり男子は向いてなかった。
というよりは、私がつのだ☆を本当に好きになれなかっただけかもしれない。恐らく向こうも同じこと。
ぽっちゃり同士が妥協から始めた恋愛は、妥協の積み重ねを恋と思い込もうとしていたからこそ、うまくいきそうでいかなかったのだ。
実はもう私は、つのだ☆の顔をはっきりと覚えていない。つのだ☆ひろにそっくりだったという印象だけがとてつもなく色濃く脳内に焼き付いているだけなのだ。もし今、彼を街中で見かけても、本物のつのだ☆ひろだと思ってきっと通り過ぎてしまうのだろう。
それでも、今でもふと思い出す。あの真冬の江ノ島で、つのだ☆としたロマンチックなキスのことを。その唇が後にも先にもないくらいに分厚く、マンボウを連想するような感触であったことを…。
<TEXT/もちづき千代子>