恐る恐る近くで見ると、それは死にたてほやほやの白いハト……。カラスにつつかれてしまったのか、身体の半分が赤く染まっている。
……ねぇ、みなさん。ハトですよ! 死んでいたのは、平和の象徴である白いハトですよ!!! これから入居しようと思っていた家のベランダに、白いハトが血に染まって死んでいたんですよ!? そんなこと、ありますか!?
思わず「ひっ」と声をあげ、後ずさりしてしまったが、そこはポジティブ思考だけが取り柄の私。この家に住みたいあまり、
「平和の象徴であるハトが死に場所に選ぶほどの家なんだ!」と声に出していたのだ。恐ろしい、恐ろしすぎる! ポジティブって怖い!
冷静な今であれば、どうしてこの豪邸がこんなにも低価格なのかに疑問を持つはずだが、人間浮かれると都合の悪いことには目を瞑る。その後、考える時間もなく、値段にそぐわない豪邸に住むことを決め、転居したのだった。
しかし、この家に住み始めた私たち一家は、ハトの呪いなのか、次々と恐怖に見舞われることとなったのだった……。その話は、また次にでも。
<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(
@singlemother_ky)
- ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。
- 娘(8歳)。しっかり者でおませな小学2年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
- 息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをものともせず保育園では人気者
※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。