あの頃、人間の三大欲求のうち二つにとてつもない負荷をかけていたのだ。ついに性欲までも、自身で無意識に抑制するようになってしまったのではないか。 　そして、セックスレスのもう一つの原因は、痩せすぎたことだと思われる。彼氏は私が拒否をするまでもなく、私を抱かなくなった。細い少年のような体型、小さくなってしまった胸…別れるという選択には至らなかったものの、女として見られなくなっていることは自覚していた。 「男は痩せすぎの女よりぽっちゃりしてた方が好き」…まさに、これを体現したかのような結果である。 　これではダメだと奮起したのは、ダイエットを始めてから一年後のことだった。少しずつ炭水化物を食べるようになり、やりすぎていた運動も適度なペースに抑えるようになった。5キロほど体重が戻ったあたりから、彼氏はまた私を抱き始めた。そして、その頃には性欲も復活。すべてが徐々に元に戻っていったのだ。 　結論としては、あまりにも無茶な、そして思い込みが激しいダイエットは、身体にも心にも何もいいことがない。人間は上手くできている。その人が自然に生活して身につけた体型こそが、その人の心にもっともマッチしたスタイルなのではなかろうか。筆者は、この経験からそれを大いに学んだ。 　そして現在、あれだけ苦労して落とした体重はほぼ元に戻っている。そして性欲も体重の増加とともに復活していった。彼氏がこの欲求を受け止めてくれるだけ、痩せすぎていたあの頃よりずっと幸せなような気がしている。 　いや、80キロまで戻る前で留めておけばよかったと頭を抱えているのも本音なのだが…。 ＜TEXT／もちづき千代子＞