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“ブラック部活”は運動部だけじゃない。吹奏楽部の異様さが話題に

 8月1日に放送されたNHK『クローズアップ現代+』の“ブラック部活”特集が、大変な話題を呼びました。練習や指導がきついだけでなく、部員同士もSNSで監視し合うので、やめるにもやめられない状況が出来上がっている。その点が“ブラック”だというのです。

1日9時間も演奏して倒れる子も

 なかでも、番組が取材したある吹奏楽部のケースは異常でした。今年の7月は、ほぼ休みなし。毎日朝8時から夕方5時までの練習14日間に加え、早朝と放課後特訓も合わせると、スケジュールは26日間埋まりっぱなし。残りの5日間も、強制参加の“自主練”にコンクールが待っている。つまり、毎日ブラバン漬けなのです。 吹奏楽部 練習内容も壮絶です。炎天下の中、9時間も楽器を演奏し続けると、ついには吐いて倒れる女子生徒があらわれたのだそう。プロだってそんな無茶なトレーニングはしないだろうに。  この放送を受け、様々な反響がありました。過酷な状況に疑問を投げかけるものはもちろんですが、一方で、厳しさを乗り越えたから達成感を得られ、成長できたのだという声も。  その賛否はともかくとしても、吹奏楽部についての議論が大きな話題となる背景には、外から見ると特殊な世界に感じられるというのがありそうです。では、その閉じられた環境で生まれるものが音楽と呼べるのかと問われると、どうも心もとなく感じるのです。

失敗せずに耐える子供を育てているだけ

 たとえば、コンクールで好成績をおさめた部を追ったドキュメンタリーを見るとき。そこにあるのは、部員が音楽について自ら考え議論を深めていくのではなく、ミスをせず正しく反応するために徹底的にしつけられている姿です。  もちろん、そうすることが勝利への近道なのでしょう。みんなで気持ちをひとつに、ミスをしなかったことへの達成感もあるでしょう。しかし、裏を返せば、それは学校での部活動という限られた範囲での成功に過ぎないのではないでしょうか。 学校 確かに、コンクールで優勝した部の演奏は見事なのです。でもよくよく考えると、それは音楽としてではなく、誰も脱落せず、失敗もなく統率が取れている管理体制に感心しているだけだと気づくのですね。つまり、“学生の吹奏楽”という曲芸を見せられているだけなのではないかと。  ベストセラー『日本人とユダヤ人』で知られる評論家の山本七平(1921-1991年)は、こうした“芸”について、よそからの影響や制約を受けないという不自然な前提がなければ機能しない類のものだとして、次のように論じています。 <いわば他に伝えられず、他に流用・転用できない閉鎖的な術、すなわち、体得した秘術ともいうべきものであろう。>(『日本はなぜ敗れるのか―――敗因21カ条』)
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ヘタクソでもいい。子供が芸術から学ぶこと
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