モテないことをアピールする自称「喪女」の不思議
多くの女性が「男に愛されるようにふるまおう」と一生懸命になっている昨今。ところが、それに逆行するように、“モテない・媚びない”ことをアピールして、自分を「喪女」と称する女性たちがいる。いったいなぜ!?
どういうわけだか自分を“喪女”と称して、Twitterで「便秘で直腸にチョコレートが詰まってるみたい」などと言わんでもいい発言をする女性が増えている。
もともと喪女とは2chから生まれた言葉で、交際経験ゼロの処女のことを指していた。けれども、昨今の自称・喪女の多くは、1人や2人程度の交際経験はある。もとの定義より広く解釈されているので、“セカンド喪女”と呼ぶ人もいる。
東大卒の芦沢文恵さん(仮名・25歳)も、ボサッとした黒髪に垢抜けないファッション、冒頭のようなモテないツイートを繰り返すセカンド喪女。会ってみると開口一番、「インタビューされるの夢だったんですよ!」と言う。あふれる上昇志向もこのタイプの喪女の特徴のひとつのようだ。
「道端でチワワを見て、スイーツ女は『かわいいっ(キャピ)』って駆け寄りますけど、私にはそれができない。常に自分の斜め上に第三の目があって、モテ仕草をしようものなら、『お前そんなキャラじゃないだろ』とツッコミが入ります」
頭の回転が速いのか、芹沢さんはこちらから聞かずとも喪女分析をどんどんまくしたて始めた。
「スクールカーストで言えば(私たちは)下から2番目。最下層は定義どおりの喪女(処女)で、ゲジゲジ眉毛で学校で隅にいたような層です。私たちは精神性は喪女ですが、コミュニケーション能力がないわけではないから、モテないながらも運よく彼氏ができることもあるのです」
交際経験は2人だけれども、喪女を自称する芹沢さん。同人誌即売イベント「文学フリマ」に出品するなど“自己表現”も彼女らのキーワードだ。
サブカルチャー界はこうした喪女の“砦”のようだが、昨今さまざまな強敵が現れ、おいしいところ取りをしているという。
「丸の内OLは別世界に住む火星人みたいなものなので、気になりません。むしろ、森ガールや、無印良品の服を着ていて趣味はカメラ、といったカルチャー女子が憎くてたまらない!」
芹沢さんは、カメラ女子が写真撮影を通してバンドマンに取り入るさまを小説にするほど、敵対心むき出しだ
さらに、彼女たち・セカンド喪女の特徴として挙げられるのは、中流階級出身者が多いこと。
「お金持ちのお嬢様は満たされてスクスク育つ。中流階級でそれなりに苦労した高学歴の女子が、私のようなタイプの喪女になりやすい」
分析家、かつ皮肉屋。自虐的でありながらもにじみ出る自己愛。モテることしか頭にない女性がいる一方で、非モテをアピールする喪女もいる。なんだか世の中、ややこしいことになっている…。
<TEXT/宮崎智之 ILLUSTRATION/Debra Hughes>
― 非モテをアピールする自称・喪女の肖像【1】―