障がいのある子のクラスで見た予想外の光景【シングルマザー、家を買う/58章】
<シングルマザー、家を買う/58章>
バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。
(前回のお話)
「表出性言語障がい」により言葉が話せない息子も来年から小学生。特別支援学級を想定していたシングルマザーだったが、教育センターの面接官から養護学校を勧められる。ショックを受けていると、面接官から両方の学校の見学を提案された。
来年に小学校の入学を控え小学校選びが始まった。
まず最初に、教育センターの方から、いわゆる普通の小学校のなかにある支援学級を見学することを勧められた。その小学校は家からとても近くて通学に最適だった。
私が小学生のころ、支援学級にはダウン症や自閉症、車いすの子などがいっしょに授業を受けていて、クラス全体で5人から7人くらいしかいない覚えがあった。
今思うと、中度くらいの障がいがあったのだろう。そこに息子がいる風景に違和感をあまり覚えなかった。ここに入れたのなら通いやすいなと思いながら教室に向かうと、通常の教室の半分くらいの部屋に6人の2年生が授業を受けていた。
ドアの外から授業風景を覗いていると、全員が教科書ですらすらと文章を読み、算数の授業も静かに受けている。その姿は健常である娘の授業参観とあまり変わらないように思える。いったいこの子たちのどこに障がいといわれるものがあるのだろうかと思うほどだ。
30分の授業を見ていても、私が過去に見ていた支援学級とはまったく違うものに感じられた。そこに私の息子がいることは想像すらできない。字を読み話すだけでなく、計算までする。まだ一言も言語を話せない息子がこの教室を走り回る姿しか、目に浮かばないのだ。
不安になった私は、教育センターの方に「うちの子は、そもそも言葉を話せないんですが、そういった前例はあるんですか?」と聞いてみたのだ。すると、背後から「うちもです!」という言葉が聞こえてきた。その女性は同じく見学に来ていた方で、脳性麻痺から来る言語障がいで会話ができない息子がいるという。障がい名こそ違えど、息子と同じ年齢で同じ症状……。初めて同じ環境のママにで会えたことに感動さえ感じた。
そのママと私を前に、教育センターの方は「これまで前例は……私の知る限りいません」とはっきり答えてくれた。そうか。ここは軽度やボーダーと言われる子たちが通う場所なのか。この時点で、教育センターの方が私に特別支援学級を見せたかった理由が分かった。頭ではわかっていても整理がつかないことを、自らの目で見てしっかりと感じさせようとしてくれたのかもしれない。
その日は、そのママと連絡先を交換することもなく、学校を後にした。なぜか、そのママとはまた会える気がしたのだ。
特別支援学級で見た予想外の光景
障がい児の母の心の整理
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