ですが、つい100年ほど前までは固く禁じられる行為でした。時はヴィクトリア朝時代(1837-1901)。“self-abuse”(弾のムダ遣い 筆者意訳)と称され、そんなことをしているとみじめな老人になるといったイラストまで作って脅していたのです。
そんな風潮に敢然と立ち向かったのが、『トム・ソーヤの冒険』で知られるアメリカの作家マーク・トウェインでした。1879年のパリで、トウェインはある演説を行いました。題して「Some Thoughts on the Science of Onanism」。
進化論や皮肉を交えて展開されるその主張は、“理不尽な教会によって、いかに不当に締め出されてきたか”、というもの。でも、もっと面白いのはその中で引用される偉人たちの名言だったりするので、ちょっとご紹介しましょう。
マーク・トウェインのその演説を収録した本『Mark Twain on Masturbation: Some Thoughts on the Science of Onanism 』(英語)
たとえば、古代ギリシアの詩人ホメーロス。『イーリアス』の中で、<吾にMasturbationを、さもなくば死を!>と激賞したといいます。
もうちょっとクールだったのがミケランジェロ。自己修養や、心の落ち着きを得ること。確かにそれも立派な行いだと前置きをしつつ、<だが真に偉大で生き生きとした精神にとっては、そのいずれもMasturbationに比べたらつまらないものだ>と断じている。
もっとも、今の私たちにここまでの感動があるかは疑わしいところですが、後ろめたい気分で取り組むよりは健全な気もします。いずれにせよ、ちょっとオナラをするぐらいのものだと考えたらいいのではないでしょうか。
というわけで、最後にこの2曲を聴き比べてみましょう。まずはチャーリーXCXの「Body Of My Own」。男に向かってこう言い放ちます。“アンタはマジヘタクソ。もうええわ。自分でクチュクチュすっから”。さながら、女性の独立宣言といったところでしょうか。
⇒【YouTube】はコチラ Charlie XCX – Body Of My Own (Audio) http://youtu.be/3Va-6_60-gg
対照的なのが、矢吹健の「あなたのブルース」。外は雨。いまはいない恋人を思いながら、<私は指を噛む せつなく指を噛む>そして、<暗いお部屋で むなしく一人歌うは ああ ああ あなたのブルース>。
人種もいろいろ、一人エッチもいろいろですね。
※参考:The health benefits of masturbation(INDEPENDENT 2016.5.27) 現在、インディペント紙はサイトのみ
<TEXT/石黒隆之>