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女VS男でテニスチャンピオンが激闘。衝撃の実話を映画化した監督夫妻にインタビュー

 1973年、全米女子チャンピオンであるビリー・ジーン・キングと、元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスによるテニスマッチ「バトル・オブ・ザ・セクシーズ(性差を超えた戦い)」は、世界中で9,000万人もの人々がテレビに釘付けになったという、歴史に残る戦いでした。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

 そのビリー・ジーン・キングをエマ・ストーンが、ボビー・リッグスをスティーブ・カレルが本人そっくりに演じた映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は、実話を忠実に映画化した話題作です。  しかも、本作を監督したヴァレリー・ファリスとジョナサン・デイトンは夫婦! 果たして監督夫妻の間にも“性差を超えた戦い”はあったのか――? 来日した監督にインタビューを行いました。
左から、ジョナサン・デイトン監督、ヴァレリー・ファリス監督

左から、ジョナサン・デイトン監督、ヴァレリー・ファリス監督

「ぐちゃぐちゃな人生を描きたかった」

――スポーツ、恋愛や政治の要素が絶妙なバランスの本作ですが、一番大変だったことは? ジョナサン・デイトン監督(以下、ジョナサン):様々な要素をバランスよく盛り込んで、ひとつの物語にするのが一番のチャレンジでした。だからこそやりがいがありました。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

ヴァレリー・ファリス監督(以下、ヴァレリー):スポーツ映画というのは、大体構成が決まっています。登場人物のラブストーリーやパーソナルなストーリーを少しずつ積み重ねて、ラストの勝負のシーンで盛り上げる――この構成を組み立てていくのはおもしろかった。 でも同時に、ビリーの恋、ボビーの夫婦の物語、男女同権運動……こういった要素をそれぞれ、同じくらいの重要さをもってストーリーに組み込んでいくのが難しかったですね。 ジョナサン:1970年代、ビリー・ジーンはテニス選手としても、男女同権運動においてもヒーローでした。皮肉なことに、彼女は有名になればなるほど、自分のセクシュアリティを隠さなくてはいけなかった。ひとりの女性としては勝利をおさめましたが、レズビアンの女性としては勝利をおさめることができなかった時代です。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

ヴァレリー:こういった、人間や人生の複雑さを映したかったんです。 ジョナサン:だって、人生って、ぐちゃぐちゃだよね(笑)! ヴァレリー:特に私たちの人生はね!(笑) ジョナサン・デイトン監督とヴァレリー・ファリス監督――お二人が監督した『リトル・ミス・サンシャイン』(2006年)と『ルビー・スパークス』(2012年)は、とてもハートフルで個性的な作品です。そんな独特の作風が『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』にも見られますが、お二人がこだわるスタイルとは? ヴァレリー:スタイルを意識して撮影したことはないんですが、登場人物の人間関係やパーソナルなストーリーをいつも描こうとしています。「この人物が歩む“心の旅”はどういうものか」を伝えるように努めています。 ジョナサン:人のもつ“欠点”に私たちは惹かれるんです。完全な人間なんていない。特に、私たち夫婦は欠点だらけ(笑)。だからこそ、人間のエモーションの真実を伝えたい。完璧に見える人にだって短所があることを知れば、「自分だけじゃないんだ」と共感できますよね。

映画では描かれていない、悲劇に終わった恋

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

――映画で描かれたビリー・ジーン・キングとマリリン・バーネットの同性愛の恋には、悲しい後日談がありますよね。二人は破局し、マリリンは、ビリー・ジーンが彼女を一生扶養するという約束を破った、とビリー・ジーンを訴えました。結局、ビリー・ジーンの勝訴に終わりましたが、マリリンはその後自殺未遂を図り、半身不随になったと聞いています。この話を映画に盛り込まなかった理由はなぜですか? ジョナサン:その件についてはかなり話し合ったんですが、この物語の一番重要な部分は、ビリー・ジーンの“目覚め”なんです。ビリー・ジーンの物語をダークで悲惨な結末にしたくなかった。この映画では、ビリー・ジーンがたどる“心の旅”や“愛の物語”を伝えたかったんです。 ジョナサン・デイトン監督とヴァレリー・ファリス監督ヴァレリー:実は、ビリー・ジーン本人にとっても、このテニスマッチを映画化するのは辛いことだったんです。あの後日談を思い出すからでしょうね。マリリンも既に亡くなっているし……。
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「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」はヒラリー対トランプ!?
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『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は7月6日(金)TOHOシネマズシャンテほか、全国順次ロードショー!
配給:20世紀フォックス映画
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