衝撃のデニム製ショーツが話題。“インスタ萎え”でも完売のナゾ
ここ数年、どう逆立ちしても大衆受けしそうにないファッションアイテムを発表するブランドが目立っています。
2018年夏にランウェイデビューを飾ったデニムパンティー、その名も「ジャンティーズ」(ジーンズとパンティーをかけ合わせた名称)。
SNSで炎上に近い批判が集まり、拡散され、結果的に密かなヒットにつながるアイテムは、偶然の産物もあれば、ブランド側からあえて仕かけていく場合もあるようです。
Y/プロジェクトのケースは、デザイナーのマーティスが「バズるファッションを狙ってきた」と語っていることから、あきらかに後者。過去にもUGGとコラボした太もも丈のぶよぶよブーツを発表しており、その際も「醜い」「だらしない」「ダサい」とメディアやネットで散々叩かれていました。
こうした奇抜なアイテムは、メディアが「バカバカしい」と切り捨てる中、意外にも売れ行きがいいとか。 その影にはやはり、SNSの力が大きく働いているようです。
「デニム製オムツ」と笑われるも初回オーダーは完売
ベルトループやポケットといった一般的なデニムパンツの腰回りにあるパーツは全て揃っているものの、両足部分がV字にすっぱり切り取られた衝撃的なビジュアルが大きな話題に。発表と同時に、多くの欧米メディアに取り上げられました。 ところが、『ニューヨーク・ポスト New York Post』が「デニム製オムツ」と呼んで揶揄するなど、ジャンティーズを紹介した大半のメディアがネガティブ反応。 インスタグラムで紹介されると、「私の人生で見てきたものの中で最も醜い」と批判が相次ぎ、ツイッターでも「デニム素材のアンダーウェアなんてありえない!?」と驚きを隠せないリアクションが続出。「インスタ映え」ならぬ「インスタの萎え」商品として扱われました。
しかし、実際には315ドルと高価なのにもかかわらず、約120着の初回オーダーが完売していたのだとか。デザイナーのグレン・マーティスもその結果にホクホク顔だといいます。 『ウォール・ストリート・ジャーナル』(以下WSJ)はこの奇妙な逆転現象を、「SNSで友人に共有したいと思わせる、言葉では言い表せない魅力を持ったアイテムを売り出すことが、新しいファッション戦略になった」と分析。 大勢の人がツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどで「話題のアレ、もう見た?」と友人に拡散していくことで、情報に触れた人のほとんどは笑って終わりにしてしまっても、100人に1人、1000人に1人の割合でお財布を手に取ってくれる人がいれば、ブランドにとっては大成功だというのです。
バズるファッションアイテム続々
【参考記事】⇒UGGの新ぶよぶよムートンブーツが賛否両論!これオシャレなの? 他のバズって賛否両論を呼んだファッションアイテムに、クラウドファンディングから生まれ、一時ソールドアウト状態になるほどのヒット商品となったRompHim(ロンプヒム)の男性用ロンパース、ジャクムスの超ビッグサイズバッグや手のひらサイズの極小バッグなどがあります。
【参考記事】⇒何これ!?男性に赤ちゃん着「ロンパース」がヒット。ネットで4千万円集まる 【参考記事】⇒今春は“超デカバッグ”が流行る?引きずるほどの巨大バッグも登場 【参考記事】⇒手のひらに乗る超ミニバッグがトレンド。ヴィトンのも可愛すぎて完売状態 今年に入ってからグッチも汚れ加工の10万円超えスニーカーを発売し、「これってカッコいいの?」と全世界で話題になりました。 【参考記事】⇒グッチが“汚れて臭そうなスニーカー”を発売。驚きのお値段は… 今春、日本のビームスと組んで、バックストラップになぜかサンバイザーやチャック式ミニバックを付けたサンダル(各税込み5940円)を発売したクロックスのCEOアンドリュー・リース氏は、「(SNS拡散を狙うことは)大きなセールスが目的ではありません。ブランドの認知度を高めて、多くの消費者にブランドの全体像を知ってもらうことが目的です」と『WSJ』に語っています。 クロックスは一風変ったコラボ商品を定期的に売り出すことで知られており、これまでにニューヨーク発のストリートブランドAlife(エーライフ)と組んだソックス付きサンダルや、バレンシアガとコラボした超高級厚底サンダルなどを発売。いずれもネット上で賛否両論を巻き起こしました。
飛び抜けて奇抜なファッションアイテムは、ネット拡散を狙ったファッションブランドの新たなマーケティング戦略。「ダサい」「ありえない」と苦言をていしているつもりでも、結局、消費者は企業側に踊らされているだけなのかもしれませんね。 Sources:「New York Post」「The Wall Street Journal」 <文/橘エコ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
橘エコ
アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。