母が脳梗塞で倒れて二世帯住宅で同居。母娘関係の変化とは?
30代の後半から40代・50代で直面することが多い親の介護問題。
親の病気がきっかけで、退職・転職するなど人生を大きく変化させる人も多いのが現状です。
そんな中、母親が脳梗塞で倒れ、半身不随になったことで二世帯住宅で一緒に暮らすことになった女性に話を聞きました。同居するようになり、どのような変化があったのでしょうか。
「じいじのところ行ってくる!」と子どもが、親世帯のいる1階へ降りていきます。その様子を微笑ましく見つめる、佐藤美樹さん(仮名39歳/主婦)。
脳梗塞で倒れる前の美樹さんの母親は、「孫大好き、アクティブばあば」でした。夕飯の材料やおもちゃ付きのお菓子を袋いっぱいに買い込んでは、美樹さんの家にほぼ毎日やってきて、孫を連れ出していたそうです。
「来てくれて助かるのですが、正直、複雑でした。実の親だからこそ気が抜けなくて」
親は子どもの変化に敏感です。だからこそ心配をかけたくなくて、無理に元気につとめ、そんな美樹さんの様子を見抜いた母親は逆に心配して毎日顔を見にやってくる……その繰り返し。
育児が大変なことを母親に知られたくなかった美樹さんにとって、母親の訪問は「安堵」と「緊張」の瞬間でもありました。
しんどい顔を見せたら、心配するからちゃんとしないと……と。
そんなある日、「アクティブばあば」であるはずの母親が脳梗塞で倒れ、2世帯生活が始まったのです。
ちなみに2世帯住宅は、玄関も水廻りもすべて別々、1階は両親、2階を佐藤家、3階は夫の書斎というプラン。
「父の希望で、玄関は別々でも室内で行き来できるようにしていますが、鍵をかければ行き来はできなくなります」
書斎は、同居をOKしてくれた夫への美樹さんなりの感謝の気持ちなのだそうです。
美樹さんは、同居するからには自分が母親の介助をするものだと思っていました。しかし母親は何の相談もなくヘルパーさんに依頼。絶対に、美樹さんに負担をかけないようにしました。
母親としてのやさしさであり、プライドだったのでしょう。美樹さんも分かってはいるのですが、「自分は頼りにされていない」と哀しい気持ちになることも。実際、頼りにされれば、生活は大変になるのは目に見えているのですが。
「もともと私は家族団らんが苦手で、親と何を話していいのか分からないタイプなんです。そのため用事がなければ1階に行くこともなく、私が下に降りると『どうしたの』と母に言われる始末でして」
…と言葉を濁す美樹さん。
同居しているのだからもっとコミュニケーションをと思う気持ちと、親子だからこその難しい距離感にもどかしさを感じているようです。そのため同居しながらも、1カ月に数回しかまともに顔を合わせないそうです。
どうしてなのかたずねると「全家庭がホームドラマのような家族団らんのできる関係とは限りません。それでも私は両親を尊敬しているんです」と小さく笑います。
母親が倒れたことで変わった暮らし
1カ月に数回しかまともに顔を合わせない
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