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宇垣美里、唱え続けた「私はロックだ」/映画『カセットテープ・ダイアリーズ』

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。 宇垣美里さん そんな宇垣さんが公開中の映画『カセットテープ・ダイアリーズ』についての思いを綴ります。
映画『カセットテープ・ダイアリーズ』

『カセットテープ・ダイアリーズ』より

●作品あらすじ:イギリスのルートンの小さな町で暮らすパキスタン系少年のジャベドは16歳。夏のアルバイトを終え、SONYのウォークマンで流行の音楽を聴きながら自転車を走らせる彼の悩みは尽きない。閉鎖的な町の人からの人種差別や、パキスタン家庭の伝統やルール・古い慣習を振りかざす父親。  けれども、そんなある日、モヤモヤをすべてぶっ飛ばしてくれる、ブルース・スプリングスティーンの音楽と衝撃的に出会い、彼の世界は180度変わり始めていく―。 『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ監督が描く、実話にもとづく青春音楽ドラマを宇垣美里さんはどう見たのでしょうか?

罵られても叩かれても、ロックがあるから生きてこられた

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』

『カセットテープ・ダイアリーズ』より

「私はロックだ」  唱え続けた、不屈の魂を呼び起こすための合言葉。  地元から出ていくことを責められようと、女が生徒会長なんて生意気だと罵られようと、見てくれのいいヤツは頭が空っぽに違いないと陰口を叩かれようと、平気だった。だって私はロックなんだもの。  MDウォークマンを握りしめ、イヤホンで雑音をシャットアウト。爆音で流れるのどが裂けるようなシャウトを聴けば、ふつふつとマグマのような闘志が湧き上がってくるのを感じた。だから折れないでここまでこられた。音楽があったから、私は生きてこられた。
映画『カセットテープ・ダイアリーズ』

『カセットテープ・ダイアリーズ』より

 だからこそ、本作で保守的な父からの抑圧や狭い町の閉塞感に押しつぶされそうになっていたジャヘドが、初めてブルース・スプリングスティーンの音楽に出合ったときの心震える感覚が痛いほどよくわかる。  夢中になって聴くうちに歌詞が溢れ出し、いつしかリズムとともに手足は動きメロディに合わせて踊りだす。その爆発的なエネルギーはもう誰にも止められやしない。その衝動を原動力に夢へと突き進む彼の姿に清々しさを覚えた。
映画『カセットテープ・ダイアリーズ』

『カセットテープ・ダイアリーズ』より

 ’87年が舞台にもかかわらず、サッチャー政権下の大量解雇や、それによる移民排斥の淀(よど)んだ空気は、今の世界と驚くほど地続きなことに落胆を禁じ得ない。何度繰り返すのだろう。数十年たっても人は生まれや育ち、肌の色で人を差別することをやめない。  それでも、私たちには音楽がある。古かろうと新しかろうと、違う言語であろうと、一度心に灯をともしたその旋律は体の内側でずっと流れ続ける。誰にも奪えないその力は、きっといつの日か世界だって変えてみせる。 カセットテープ・ダイアリーズ』’19年/イギリス/1時間57分 監督/グリンダ・チャーダ 出演/ヴィヴェイク・カルラ 配給/ポニーキャニオン ©BIF Bruce Limited 2019 <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、モデル・女優業や執筆業などに幅広く挑戦している。
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