30代から急増する女性の「がん」。そのとき「お金」の問題は?【後編】

<乳がんを克服した藤森香衣さん(モデル)×岩瀬大輔・ライフネット生命保険社長が語る「女性の病気とお金」>

⇒【中編】「どんなポイントで保険を選ぶべき?」

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お金持ちに保険はいらない、貯蓄がない人にこそ必要



藤森香衣さん×岩瀬大輔社長藤森: 岩瀬社長も以前、何かのインタビューでおっしゃっていましたが、車やマンションは、みんな真剣に考えて買うのに、なぜか保険は「なんとなく」で入ってしまう。私は月額5000円くらいの保険で、かかった医療費は60万円。10年分の保険料です。60万円を一括で払うとなると「ええ!?」って思うのですが、月5000円だと、その大きさがわからなくなってしまう。まあ、私は加入した年にがんだとわかったので、支払った保険料はわずかでしたけど……。

岩瀬: 月5000円でも、10年で60万円の買い物なのだから、慎重に選ぼうということですね。でも、保険に入るということは、月々の貯金と同じなんです。何かあったとき、蓄えやあるいはご両親からの支援などで200万~300万円を出せるのであれば、戻ってこないかもしれない保険料を毎月払うより、貯金のほうがいい。ただ、実際にはそうでない方も多く、そこをフォローするのが本来の保険の役割なんです。

――むしろ、お金に余裕のない人のほうが、保険は必要だと。

岩瀬: 逆説的なように聞こえるかもしれませんが、お金持ちの方には保険はいらないですよ。

藤森: 友達の言っていた言葉の意味を痛感したのは、病院窓口での支払いのときです。毎回、2万円、3万円が平気で出ていく。数日後、また同じようにお財布からお金が出ていく。病気だし、現金は出ていくし、仕事のこともわからないしで三重苦になるんです。

岩瀬: そんな弱っているときに、ちょっとでも保険に入っていて、いくらかがもらえるかもらえないかでは、気持ちは全然違いますよね。

藤森: 活動の中でがんの専門の先生たちとお話する機会があるのですが、先生たちがおっしゃるのは、いろんなクスリが開発されていて、助かる方法はどんどん出てきている。でも、それにはお金がかかるって。お金で命を諦めるのって、本当につらいですし、誰にもしてほしくありません。

岩瀬: それでもやはり、病気と保険に対する意識はまだまだです。身近な人が当事者になるとか、そういうきっかけがないと気づかないというのは、もったいないんですけどね。

藤森香衣さん×岩瀬大輔社長 今は、ネットもありますし、いろいろ比較して、選ぶことができる。なのに、選べていないというのが現状なのかもしれませんね。

岩瀬: 忙しいというのもあるんでしょうね。ライフネット生命で始めた「保険相談専用ダイヤル」は平日夜19時まで、コールセンターは平日夜22時までやっていますが、やはり、仕事が終わった時間からのお問い合わせが多い。スマートフォンでも申し込みできるようにするなど、利便性の追求は常に考えています。

藤森: 私は保険に入れない立場になりました。サバイバーでも入れる保険商品もありますが、やはり、自由に選ぶことはできません。今になって、なんでもっと検討しておかなかったんだろうって思うんです。なんていうか、いつでもあると思うと気にも留めないのに、絶対に手に入れられないとなると、より欲しくなる(笑)。

岩瀬: 恋愛と一緒ですね(笑)。

藤森: (笑)だからこそ、伝えていきたいなって思うんです。検診のこと、病気のこと、お金や保険のこと。あとは、病気後のケアに関する情報ですね。先ほど、ウイッグのお話がありましたが、がんになり、胸を失ったり、髪の毛やまつげを失ったりする。病気の治療“後”、サバイバーが、どう生きていくかの情報をまとめたサイトを作りたいなって思っているんです。

岩瀬: 素晴らしいですね。それが多くの方にも見てもらえるものになると、病気や保険についての意識が高まるでしょうし、素敵だと思います。

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【岩瀬大輔】
ライフネット生命保険代表取締役社長兼COO。1976年埼玉県生まれ。東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、ハーバード大学経営大学院に留学。2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。主な著書に『生命保険のカラクリ』『がん保険のカラクリ』(共に文春新書)など
(ライフネット生命保険 http://www.lifenet-seimei.co.jp/

【藤森香衣】
11才からモデルを始め、広告を中心に活動、出演したCMは70本超。またモデルの活動と同時に女性のためのライフスタイル提案や、企業での講演、商品開発も行う。2013年4月、乳がんにより右乳房を全摘出。手術と同時に病気を公表し、がん全般の啓蒙活動を行っている。医師が応えるQ&Aサイト『ドクターズミー』(https://doctors-me.com/)にて、がんコラム「自分らしく生きていくために」を連載。http://www.kae-fujimori.jp/

<TEXT/鈴木靖子 PHOTO/山田耕司>

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