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『姉ちゃんの恋人』はコロナの描き方が甘い?現実を忘れられる魅力も

『#リモラブ』や『この恋あたためますか』、『恋する母たち』、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』などが放送され、恋愛リアリティーショーの影に隠れつつあった「恋愛ドラマ」がここにきて乱立している2020年の秋冬ドラマ。  その作品たちのなかでは視聴率が低く苦戦を強いられているものの、『姉ちゃんの恋人』(フジテレビ系列/毎週火曜9時~)もこの混沌(こんとん)とした時代に「恋をすることの尊さ」を熱心に伝えようとしてくるドラマだ。
『姉ちゃんの恋人』(画像:カンテレ公式サイトより)

『姉ちゃんの恋人』(画像:カンテレ公式サイトより)

“地球規模”のエモーショナルな出会い

『姉ちゃんの恋人』を構成するのは「家族」と「仕事」、「恋愛」という極標準的な3要素である。  有村架純演じる主人公の安達桃子は、高校時代に両親を事故で亡くし、大学進学を断念してホームセンターで働きながら3人の弟たちを養ってきた。そして働きはじめて9年が経ったある時、クリスマスに向けた店内装飾のプロジェクトリーダーに任命される。  そこで同じホームセンターの配送部に勤める吉岡真人(林遣都)に出会い、徐々に彼に惹かれていく……、というのが大まかなストーリーである。  昼のホームセンターで働く桃子と、夜の配送業務に従事する真人。何かのきっかけがなければきっと出会うはずのなかったふたり。本作では“地球”が事あるごとに映し出されるが、第1話では地球の装飾品がパックリ割れてしまい、それを修理する真人の姿が描かれていた。昼と夜、販売スタッフと配送業。まるで地球の反対側にいたふたりがひとつに混じり合うように、本作の出会いは演出されるのだ。

コロナの描き方が甘い?でもこれ以上は…

 コロナ禍を無視する、あるいは無視せざるを得ないドラマもあるなかで、本作がコロナのある現実の世界線をたどっていることは明らかだろう。「コロナ」という言葉こそ発されないが、半年ほど前を振り返る第1話冒頭の会話やホームセンターでマスクを奪い合うお客たちの描写などがそのことを暗に示している。  一方で、もうすでにコロナが収まったかのように主人公たちはマスクをしないし、ソーシャルディスタンスの意識が曖昧だと指摘する視聴者の声もある。  しかしそういった違和感は話数を重ねていくごとに慣れていくものである。本作はコロナのある現実を舞台としながらも、コロナを面と向かって描くわけではない。その代わりに、主人公たちが過去に負ってしまった「傷」をしっかりと描写することで、ウィズコロナの時代にわれわれが抱えている「ストレス」や「不安」みたいなものを間接的に補完しようとしているようにも見える。  言うまでもなくコロナは世界のあり方を変え、生活を混沌に押し込め、「非日常を日常化」してしまった。その世界を真っ向から描くことは可能かもしれないが、それはあまりにもドラマとして暗くなってしまう可能性があるだろう。 『姉ちゃんの恋人』のドラマメイクからは、「現実を突きつける」というより「現実を忘れられる」作品を作ろうという製作陣の意思が垣間見える。ドラマを見ているこの時間だけはコロナの非日常を忘却し、恋をする日常の尊さを再認識するということ。そうした作りがゆえに、若干の浮世離れした雰囲気は許容したいところだ。
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「幸せになること」をあきらめる必要はあるのか
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