Gourmet

洋食に味噌汁。ご飯に合う料理を出す、という老舗町洋食店の哲学

 街角にひっそりと佇む昔ながらの洋食店。どんな街にも当たり前のようにある光景が、今、少しずつ姿を消しつつある。そんな町洋食の語り尽くせない本当のスゴさに迫る――。

洋食店が変えるべきもの。変えてはいけないもの

町洋食

洋食GOTOOのカウンター席。新たにテーブル席をつくる一方で、昔ながらの形も残る

 創業から49年の洋食GOTOO(ゴトウ、東京都・豊島区南大塚)。その歴史は変革の歴史でもある。いまでも時には店に立ち「マスター」と呼ばれている創業者の後藤真男さんから、現在のオーナーシェフである息子の義彦さんに引き継がれていく中で、2人は「大喧嘩」を繰り返し、店をつくり変えていった。  義彦さんの執念で改良がなされた「豚肉生姜焼のタレ」は成功例の一つだったが、時には失敗もあった。それが「みそ汁事件」である。  この店では、創業当時からずっと定食にはライスとみそ汁が提供されていたが、フレンチなどでの修業を経て入店した義彦さんは、違和感を持ち続けていた。「みそ汁ではなくスープをつけるべきでは」と義彦さんはマスターに進言し続けたが、聞き入れてもらえない。  義彦さんは、その他にも変えたくても変えてもらえない案件が積もり、フラストレーションを抱えていた。そんなこともあって、マスターが店に立つのはランチまで、ディナーは義彦さんが好きなようにやるという体制に移行。ディナータイムに限って、みそ汁ではなく日替わりのスープを定食につけるという計画を実行する。

みそ汁が残ってきたことなんてなかったのに…

町洋食

アスパラガスのサラダ。創業時から変わらないぽってりと濃厚な自家製マヨネーズがうまい。マヨネーズはマカロニサラダなどにも使われる

 コンソメ、クラムチャウダー、季節ごとの野菜のポタージュなどフレンチ仕込みの義彦さんのスープは一部のお客さんに大好評を博した。なかには「毎回替わるスープが楽しみで」と足繁く店に通ってくれる常連さんもいた。  ところが一定数「なんでみそ汁じゃないの」と不満を漏らすお客さんも。そういうときは渋々ランチで余ったみそ汁を温め直して出した。そうするうち義彦さんはあることに気づく。スープは飲み切らずに残ってくることが度々ある。みそ汁が残ってきたことなんてまずなかったのに。 「洋食店はごはんをおいしく食べてもらうのが一番大事。そしてごはんに一番合うスープってみそ汁なんだと、改めて気づいたんです」  その後、結局スープはみそ汁に戻された。そんな経験を重ねた義彦さんは言う。 「変えるべきものと変えてはいけないものがあるんですよ」
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店主が「極めて優秀かつ現代的なマーケッターでもある」ワケ
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洋食GOTOO
東京都豊島区南大塚3-54-1
11~14時、17時30分~20時(ラストオーダー)※水曜はランチのみ、日曜祝日定休
現在の店舗は’01年に改装。イタリアンレストランを思わせるスタイルに
(コロナの影響により営業時間はお店にご確認ください)

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