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リアル『ボクたちの交換日記』。売れなさすぎる芸人に密着

「33フリッパ」。GYON(左)と遠藤三流の結成7年のコンビ

 映画『ボクたちの交換日記』を観てきた。鈴木おさむ原作の、売れない芸人の物語。映画館で思わず一人、号泣した。あまりにも自分と境遇が似ていたから。そうなんだよ、つらいんだよ、売れないってつらいんだよ。劇中に出てきた「諦めるのも才能」という台詞。その通りだと思う。

 売れない芸人さんを取材しようと思った。聞いてみたいことがある。「どうしてお笑いを続けているんですか?」

賞金2000円、出演費3000円



 4月17日、10:00。成増駅改札待ち合わせ。やってきたのは、「33(サンサン)フリッパ」という若手コンビ。先日行われた月1回の小さなお笑いライブで、金賞を受賞した。賞金は2000円。しかし出演するのに3000円かかる。せめて賞金を3000円にしてくれたら……。ギャラが安いのはいい。でも赤字になると心が折れる。

坂をひたすら歩く

 33フリッパのネタ作りは、町を歩くことから始まる。坂道や平坦な道を歩きながら、世間話をする。「この間、こんなことがあった」「ああ、そういうヤツいるよな」「そういう時、大概こうなんだよ」そんな話をしているうちに、いつの間にかコントや漫才の土台ができている。気づけば3時間、歩き続けることもある。調子が悪いときは早々と切り上げて、パチンコ屋で玉を打つ。勝った負けたですぐ熱くなるのはGYONさん。キャラの濃いGYONさんを冷静に観察してネタを作るのが遠藤三流(みつる)さんだ。

 しかも、作家の山口さんと三人で同居している。1K、7畳、家賃は月3万7000円。7畳の部屋に3枚の布団を敷き詰めて寝ている。遠藤さんのイビキがうるさいため、GYONさんはいつも寝ている遠藤さんの口の中にわさびやラー油を入れる。それでも起きない。遠藤さん曰く、わさびは“辛い”のではなく“熱い”らしい。GYONさんは寝相が悪く、部屋で寝ていたはずが外の階段で目が覚めたこともある。山口さんは2人を隠し撮りするのが趣味らしい。そんな生活だ。

 専門学校で知り合ってから16年。コンビ結成から7年。遠藤さんはかつて別のコンビを組んでいた。元相方は、今や賞レースの決勝に進出する売れっ子だ。「他の人と組みたい」。解散を言い渡され、遠藤さんはすんなり受け入れた。そんなとき、GYONさんから一緒にやろうと誘われた。「絶対に売れるから」そこからコンビを結成して、今に至る。

⇒【写真】http://joshi-spa.jp/?attachment_id=10712

 活動は主に、浅草の東洋館。33フリッパのスタイルは、微妙な“間”を活かしたドラマ仕立てのコントだ。しかしそれでは、お年寄りにウケない。ゆっくりしたペースの分かりやすい漫才をする。自分たちのスタイルを捨てても、お客さんが笑ってくれればいい。

 遠藤さんは宮城県石巻市出身。東日本大震災で最も死者が多かった市だ。GYONさんは名取市出身。多くの友人を亡くした。そんな時でも人を笑わせなければいけない。迷いもあった。今は故郷に錦を飾るために頑張っている。

⇒【後編】に続く 『「辞めたい」と思わないのか』 http://joshi-spa.jp/10837

<TEXT,PHOTO/尾崎ムギ子>




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