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エロおやじ・火野正平が味わい深い、NHK『にっぽん縦断 こころ旅』

 NHKのBSプレミアムで放映中の『にっぽん縦断 こころ旅』が放送開始から4年目を迎え、ますます絶好調です。  俳優の火野正平(65歳)が視聴者からの手紙にしたためられた思い出の場所を自転車で訪ねるというシンプル極まりない構成なのですが、これが実に味わい深い。目的地にたどり着くことよりも、そこまでの火野正平の一挙手一投足こそが最大の見どころだと言ってもよいほどです。

65歳になっても“女好き”

NHK『にっぽん縦断 こころ旅』 食事のシーンでは、卵がふわふわのオムライスを嫌がったり、ラーメン屋でトマトラーメンを注文して後悔したりと、味の好みを隠しません。さらに道中で出会う一般人、特にデリカシーのないおばちゃんは正平にとって最大の難敵。不愉快であることが顔に出る前にそそくさと退散する姿に共感する視聴者も少なくないでしょう。  そして放送を重ねるごとに同行するスタッフとのやり取りも切れ味を増してきています。種子島を旅した回では、大小二つのロケットを横目に「あれ(大きいの)俺の、あれ(小さいの)じゅん(スタッフの一人)の!!」と、ロケットをおちん〇んに見立ててスタッフをいじったことも。  そうして様々な表情を見せる火野正平ですが、やはり若くきれいな女性を発見したときのスイッチの切り替わりには目を見張るものがあります。特に脚のきれいな女性には目がなく、見つけてすぐの第一声で「〇△(その地名)あんよ~!!」と奇声をあげます。そこからチャリオ(正平独自の自転車の呼称)の速度を緩めつつ、確実にターゲットとの距離を縮める。  一瞬アニマルプラネットを観ているのかと錯覚するほどに、規則正しい野生のオスの行動そのものです。  だてに芸能界きってのプレイボーイと呼ばれていたわけではありません。齢を重ねギラツキはマイルドになりながらも、その果てしない女性への愛が凝縮され、さらに凄味を増している。時に輪行する際の車内で優先席にある妊婦マークを見つけると、「まだこうする力は残っています」と言うのは恐らく本気でしょう。  そんな火野正平とは似ても似つかない爽やかな番組テーマ曲を歌うのが池田綾子。地声とファルセットの境がほとんどなく、澄んだトーンのままメロディを連結させることのできる素晴らしい歌手です。美しく心地のよいメロディを素直にそのまま歌える技術が貴重なものであることを再認識させてくれます。「面白い音楽」とか「新しい音楽」とは何かを考える前に、一度通っておくべき基礎を提示してくれる。そういう歌と曲なのではないでしょうか。 ⇒【YouTube】池田綾子「こころたび」 http://youtu.be/gMIi9PpyH1s ●番組HP http://www.nhk.or.jp/kokorotabi/ ⇒【後編】に続く「“女たらし”と言えば…ブリトニー・スピアーズのこの名曲」 http://joshi-spa.jp/108538 <TEXT/音楽批評・石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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