“女たらし”と言えば…ブリトニー・スピアーズのこの名曲

 NHKのBSプレミアムで放映中の『にっぽん縦断 こころ旅』が放送開始から4年目を迎え、ますます絶好調です。

 俳優の火野正平(65歳)が視聴者からの手紙にしたためられた思い出の場所を自転車で訪ねるというシンプル極まりない構成なのですが、これが実に味わい深い。目的地にたどり着くことよりも、そこまでの火野正平の一挙手一投足こそが最大の見どころだと言ってもよいほどです。

⇒【前編】エロおやじ・火野正平が味わい深い、NHK『にっぽん縦断 こころ旅』

 しかしそうは言っても野生のハンターとしての正平が顔をのぞかせると、どうしても別に浮かんできてしまう曲があります。ブリトニー・スピアーズの08年の大ヒット曲「Womanizer」(女たらし)です。

ゴシップ女王ブリトニーの実力



Britney Spears 「Womanizer」 まずイントロのサイレンのような音が、スイッチの切り替わりを思わせて仕方がない。もっとも、この曲で歌われているような程度の低い女たらしと正平の深い女性好きとではかなり色合いが違いそうですが、「〇△あんよ~!!」とイントロのサウンドは、やはり一致しているように思います。

 それはともかく、ブリトニーの「Womanizer」もこれまた大変な名曲です。過去のヒット曲同様、妙に短調の似合う歌声と畳みかけるような8分の12拍子がとても印象的な楽曲です。

⇒【YouTube】Britney Spears 「Womanizer」

 結婚、離婚、そしてアルコールにドラッグ。さらには度重なる奇行からゴシップ誌の格好のネタにされ続けてきた彼女ですが、この曲で完全復活を遂げました。もしかしたらイロモノ扱いされてしまいがちな歌手なのかもしれません。しかし意外なところからも彼女の曲を評価する向きがあることをご存知でしょうか。

ブリトニーの”ポップス1000年を代表する1曲”



 イギリスのギタリストでシンガーソングライターのリチャード・トンプソン。彼が03年に発表した壮大なタイトルのライブアルバム「1000 Years Of Popular Music」で取り上げた古今の名曲・23曲の中に、ブリトニーの「Oops!… I Did It Again」があります。リチャード・トンプソンが考えるに、ポップス1000年の歴史を代表する一曲であるということです。

 数々のトラディショナルナンバーや「Cry Me A River」といったジャズの名曲。さらにはスクイーズの大ヒット「Tempted」やプリンスの「Kiss」と並んでブリトニーの曲があることに新鮮な驚きを覚えます。しかし同時にその見識が極めてフェアな判断に基づいていることも分かる。曲が全てなのです。

【YouTube】Richard Thompson 「Oops!… I Did It Again」

 いまさらリチャード・トンプソンのギターについてどうこう言うほど野暮なことはありません。しかし歌いながらここまでベースラインを際立たせた演奏ができれば、パーカッション以外に伴奏者は要らないでしょう。実に真剣にこの“くだらない”ポップソングを愛している様子がうかがえます。

 リチャード・トンプソンも、見事な曲に出会えばそれを歌うのが誰であろうとスイッチが切り替わる。真摯なソングライターだからこそ抑えることのできない節操のなさがチャーミングなのではないでしょうか。
 
<TEXT/音楽批評・石黒隆之>




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