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フェミニズム本を作った男性編集者に感じた、“違和感”の正体

「なんだか、女って生きづらい……」――。そんな漠然とした違和感、不公平感を抱いたことはありませんか?
姫野桂

ライター姫野桂さん

『発達障害グレーゾーン』の大ヒットで知られるライター・姫野桂さんが、自身のさまざまな“生きづらさ”をつづった初エッセイ『生きづらさにまみれて』を刊行しました。本書では、30歳で発覚した発達障害や、コロナの影響でアルコール依存症になったこと、仕事関係者から“都合のいい女”にされてしまった体験などが赤裸々につづられています。

“フェミニズムの話”に気が重くなる理由

『生きづらさにまみれて』(晶文社)

『生きづらさにまみれて』(晶文社)

 日本女子大学出身の姫野さんは、女性学の講義で「フェミニズムとは女性が男性と同じ権利を持つために世に出ていくこと」と学んだそう。卒業した今でもフェミニズムに関心がある一方で、「本音を言うと、フェミニズムの話をするのは気が重くなる」とも語ります。  性被害を訴える女性がいると「誘うような格好をしていたのではないか」「ハニートラップなのではないか」とセカンドレイプを受けてしまうような、あまりにもツラい現状が、日本社会にはあるからです。  今回はそんな姫野さんが、フェミニスト本を手掛けた某男性編集者に話を聞きました(以下、『生きづらさにまみれて』より抜粋、再編集)。

元ホモソ編集者がフェミ本でヒットを飛ばすまで

お仕事

※イメージです(以下、同じ)

 私と同い年でフェミニズムをテーマにした本の編集を手がけている男性編集者の原口翔太さん(仮名・31歳)がいる。フェミ系の本を同い年の男性が編集している。まずそのことに興味がわいた。彼は昔から男女の権利について考えていたのかと思いきや、意外な変遷を語ってくれた。  原口さんは男子校出身で、ホモソーシャル的価値観のド真ん中にいたという。中学の頃はエロ本の回し読みをし、誰かが若い女性教師をからかうのを「あ〜面白いなぁ」という感覚で見ていた。そんなノリのまま大学に進学したら、語学系の大学だったこともあり、学生の8割が女子だった。そこではとにかく女子たちに怒られた。「きちんと風呂に入れ」「服装がだらしない」「遅刻するな」といった理由だ。男性同士だったら「そんな細かいこと気にすんな」となるので、当時は「うるさいな」と思っていた。  学生時代の友人の結婚式に参列し、ホモソなノリのままの友人の姿を見てしまうと、どんなに良い奴であっても、今の彼には「人の顔面を踏みつけても平気な人たち」に見えることもある。でも、そこで職業上フェミっぽい振る舞いをすると、友人たちからは自分が女性の味方をしているように見えているんだろうなと、微妙な心境になるという。そしてぼそっと「僕も昔はホモソのノリを盛り上げる側だったんですけどね……」と付け加えた。  原口さんがフェミニズムに興味を持ったのは偶然だった。フェミニズムというジャンルは知っていたが、それが自分に関係してくることとは全く思っていなかったという。面白い書き手を見つけ、その人のフェミニズムに関する原稿を読んでいると、驚くことが多く引き込まれた。  そしてこれは仕事上のコンテンツとして成り立つのではないかと思った。その予想は的中し、彼が手がけたフェミニズム本はかなり売れている。この本の編集作業を通じて、女性は仕事が終わった後にデートや遊びに行く際に一度着替えるということを初めて知ったそうだ。  男性だったら仕事帰りにスーツのまま遊びに行くが、なぜ着替えるのか訊いてみると「職場に本気の服を着て行って会社の同僚男性から論評されるのが嫌だ」という。原口さんも「そのTシャツダサい」などと言われたら確かに嫌だがそこまで気にしないと思う、と。その感じ方に男女で差があること自体が面白いとのことだ。
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原口さんの後悔「女性に嫌な思いをさせてしまった」
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