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不倫で救われた44歳男性「ローンでうつ状態の僕に生きる勇気をくれた」

 既婚者の恋愛は、当然のことながらリスクを伴う。誰もがわかっていることなのに、なぜか恋に落ちた人は「自分はバレない」と思いがちだ。本当にリスクを体感していれば、そんな危ない道には踏み込まないはずだ。  だが、リスクを考えるより前に動いてしまう人もいる。壁に囲まれた状況の中で、唯一、婚外恋愛の相手だけが「希望の光」に見えたからだ。
コロナ不倫

写真はイメージです(以下同)

マイホームを買って堕ちた虚無感

「40歳のとき、東京郊外に新築マンションを購入したんです。僕は田舎育ちなので、一軒家がいいと思ったけど、僕の給料ではむずかしい。  友人を見ていると、頭金は親が出してくれたなんていうヤツもいるけど、うちは無理。妻の実家も無理。自力でがんばろうと結婚した当時から夫婦でコツコツ貯金をしてきました。だから家を買ったときの妻の喜びようは今もはっきり覚えています」  サトシさん(44歳)はそう言った。結婚して16年、中学生と小学生の子どもたちがいる。そろそろ自室を与えたいと、3LDKのマンションを買ったのが4年前。 「妻は喜んでいましたが、僕はマイホームを手にした喜びより、ここからもう動けないという諦めみたいなもののほうが大きかったんですよ」  それはローンを組んだときの脱力感に由来するのかもしれない。30年ローンは、彼が死んだら生命保険と相殺されることになっている。 「僕がいなくなっても、妻子は住むところには困らない。むしろ僕が死んだほうが、彼らにとってはいいのかもしれない。僕が生きていれば、働き続けてお金を払わなければいけないのだから。  それを考えると、なんとなく虚無感というのでしょうか、何のために生きているのかなという思いがよぎりました」

悪いことは何一つないのに気が晴れない

 もし彼が死んだら、家のローンは相殺されても、パートで働く妻と子どもたちはもちろん生活に困るのだ。家を売りたくても希望価格で売れるとは限らない。もしかしたら評価額が下がっているかもしれない。現実には、決して妻子にとって得なわけではないのだが、「主たる生計」を担っている彼としては、複雑な思いはあっただろう。 落ち込むサラリーマン男性「家を購入してから、家というのは妻のためにあるものだとも思うようになりました。明るいキッチンが望みだった妻は、以前の賃貸マンションのときよりずっと料理に精を出すようになった。でも通勤時間が長くなった僕は、できたて料理はほとんど食べられない。なんとなく自分だけが不遇なような気がしてね」  40歳、不惑。家を買い、家族もみんな元気でいる。悪いことは何一つないのに気が晴れない。そんなことは多いのかもしれない。子どもが卒業したとか結婚したとか、いいことがあったときにうつ状態になる人も少なくないのだ。環境が変わることは、うつを引き起こすひとつの要因となるとされている。

暗闇に現れた光

 そんなわけでかなり気分が落ち込んだサトシさん。当時は忙しくて、週に2日くらいは自宅に帰れない日もあった。 「カプセルホテルに泊まる前にときどき行くバーで、顔見知りの女性ができたんです。その店で軽く飲んだり食べたりして話すだけ。でもなんだか楽しくてね、家に帰れない日があるときは必ずその店に行きました」  あるとき、彼女が用があると先に帰ったのだが、ふと見ると椅子の下に何かが落ちている。彼女の携帯だった。彼は携帯を握りしめてあわてて店を出た。駅まで必死に走ったが、彼女の姿を見つけることはできなかった。 「店に戻って預けようかと思ったけど、ないと不便でしょう。明日の朝にでもどこかで落ち合って渡そうと持っていたんです」 スマホ 男性 午前零時を回ったころ、彼女の携帯が鳴った。彼が出ると声で察した彼女が、彼の苗字を叫び、「持っていてくださったんですね」とホッとしたように言った。 「今から届けようかと言ったら、いや、それは悪いから私が戻ります、と。そんなわけにはと押し問答があって、じゃあ、新宿で落ち合おうということになったんです」  そこで彼は急に黙り込んだ。その日に「何か」があったのだろう。どちらが誘ったのか、あうんの呼吸だったのか……。
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「私、そんなに魅力がないですか」
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