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NHKテロップねつ造問題で河瀬監督の責任を問う声も。問題の核心とは

年明けからSNSを賑わせている「NHKテロップ捏造(ねつぞう)問題」。 昨年開催された東京五輪公式記録映画を制作する河瀨直美監督の姿を追う年末の26日に放映された『河瀨直美が見つめた東京五輪』というドキュメンタリーの中で五輪デモに参加した男性に対するインタビューのシーンで「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」というテロップが、その後の調査により事実でなかったことが発覚した。
「河瀨直美が見つめた東京五輪」-BS1スペシャル-NHK

(画像:BS1スペシャル「河瀨直美が見つめた東京五輪」NHK公式サイトより)

年明けの9日にNHKが事実誤認に関するお詫びを放送、10日、11日と相次いで河瀨直美氏およびこのシーンの取材を直接担当した映画監督の島田角栄氏が「このシーンについては事前に知らされておらず、事実と異なる内容が放映されたことは極めて残念である」という趣旨のコメントが発表された。 筆者は日常的にライターとして映画監督・俳優の取材や行政書士として映画制作にまつわる契約締結などに従事しているが、映像制作スタッフでないことはもちろん、テレビの世界とは無縁である。しかしながら、日常的に創作活動に奮闘するスタッフを横目で見ている言わば「外野の立場」から、番組制作に携わるNHKスタッフの証言なども交えて、なぜこのようなことが起きてしまったのかについて検証してみたい。

番組のメッセージは?

この動画は最初から最後まで視聴したが、世間で言われているような「五輪を礼賛する内容にするような印象操作」はなかったと見るのが自然だと感じた。なぜならば、この番組のテーマは「公式チームは五輪をどのような視点から描くのか」ということもテーマになっており、五輪開催に疑問を持つ人たちの姿も描かれる。そして「五輪を批判する視点が失われるようなことがあってはならない」と河瀨氏の専門学校時代の教え子にあたる島田氏が語るシーンもある。 オリンピック「五輪万歳」のメッセージを発信することを目的とはしておらず、むしろ「コロナ禍で五輪公式映画を撮影する」ことの意味やその中で制作者として感じた葛藤などを描いたものと評価でき、「五輪が私たちの社会に残したものとは。映画の制作を通じてその問いと向き合う河瀨さんを密着取材。」とある番組公式HPの文言に偽りはないと感じた。

ねつ造かミスかの二択の前に

NHK幹部の会見によるテロップ付加の経緯は、この男性が「これまで複数のデモに参加して現金を受け取ったことがあり、五輪反対のデモにも参加してお金を受け取ろうという意向がある」と証言したにもかかわらず、「金銭を受け取って五輪反対デモに参加した」と思い込んでテロップを付けてしまった、というもの。 そもそも論なのだが、筆者が疑問に思ったのは、なぜこの番組制作者は、思い込みであったとしても「金銭を受け取ってデモに参加した人がいる」と認識した時に、再度カメラを向けて「あなたはなぜ金銭をもらってデモに参加したのですか?誰からもらったのですか?どのようなタイミングでもらったのですか?」と問い質し、そしてモザイクなり音声を変えるなどしてでも、その様子を放送することをしなかったのか、ということ。
TV アナウンサー 取材 撮影 テレビ局

写真はイメージです(以下同じ)

事実の真偽云々以前に、テロップでさらっと説明しようとしたこと自体、取材に手間を掛けないという意味において、今話題のWebメディアの「こたつ記事」のテレビ版的なのではないかという気がしてしまう。自分の狙った絵が撮れたのでそれをつなげれば良し、という感覚だったのではないか。 確かに、このシーンは「島田氏が取材している様子」を収めたものであり、番組制作者には自らが男性への取材者であるという意識が足りなかったのかもしれない。また、「取材に協力してもらっている」という忖度(そんたく)もあったのかもしれない。 しかし、「金銭をもらって五輪デモに参加する人がいる」ということが、もし本当のことだったならばいわゆる特大スクープではなかろうか。そして、その背景を探って行けば、新たな事実が発覚するチャンスだったかもしれないのだ。
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問題の核心は?
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