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ランドセルの無料配布、なぜ全国に広まらない?40年以上続ける日立市に聞いた

 小さな子どもを育てる人たちのなかには、小学校入学準備にかかる費用に戦々恐々としている人も少なくないのではないでしょうか。  費用のなかでも大きな割合を占めるのが、ランドセル。2022年4月入学の児童の親を対象にした調査によると、ランドセルの平均購入額は5万6425円となっています。(ランドセル工業会による)。近年の物価高騰やコロナ禍の収入減で、家計への負担も高まっており、SNSでは「高すぎる」など嘆きの声も聞こえてきます。
ランドセル

写真提供:日立市教育委員会(以下、同じ)

 そんななか、茨城県日立市の取り組みが密かに話題になっています。なんと40年以上、市の小学生全員にランドセルを贈呈する取り組みを行っているのです。そして、ランドセルそのものにもこだわりがあるのだとか……。  ランドセルを無料で配布しようと試みた理由とは? また、取り組みが注目されているなか、世間からはどのような意見があがっているのか。日立市の教育委員会学務課の酒地康彦さんに話を聞きました。

ランドセル贈呈のきっかけはオイルショック

ランドセル――ランドセルを無料で配布しようと考えたきっかけは何ですか? 取り組みが始まったのは、1975年(昭和50年)からです。当時はオイルショックが襲来した時期で、各家庭の経済的負担を軽減しようと、新一年生のお祝いとしてランドセルを配布し始めました。日立市の小学校24校及び義務教育学校1校を対象とし、毎年1000個ほどお渡しています。 ――好きなランドセルを購入して使っている児童もいるのですか? 必ずしも贈呈されたランドセルを使わなければいけないという決まりはありません。そのため本人の希望によっては、自分で選んだランドセルを使うことも可能です。とはいえ、今ではほとんど全員のお子さんが配布されたランドセルを使っていて、市民に浸透していると考えております。 ――ランドセルの特徴について教えてください。 通常のランドセルの重さは1kg以上といわれていますが、日立市のランドセルは約550gと軽いのが特徴です。「おそらく日本で一番軽いランドセル」だと業者の方からも言われました。また、コンパクトなサイズ感が好評で、購入できる場所を市外の方から尋ねていただくこともあります。そういう方には、作っていただいている日立市カバン袋物同業組合を紹介しています。約1万円ほどで購入が可能です。 ――カラー展開もされているのでしょうか? 赤と黒の2色を展開しています。入学前就学時健康診断などでお子さんたちが学校に集まる際に、希望する色を選んでもらっています。性別にかかわらず自由に選んでいただいているので、女子児童が黒のランドセルを使っている例もあります。

時代に合わせてアップデートし続けるランドセル

ランドセルの歴史――自由に色を選択できるのはいいですね。 ジェンダー平等などの意味合いから1色のみのカラー展開がいいのではという意見も聞きます。ただし、選択肢の幅を狭めることが最善なのかは、しっかり考えるべきなのかなと思います。時代によって考えも変化していきますし、費用的な問題も発生してきますので、市の財政状況なども踏まえながら「時代に合ったランドセル」を今後とも検討してまいります。 ――ということは、今展開されているランドセルも贈呈を始めた当初とは異なるのですか? はい。何回か改良を加えており、現在は3代目です。特に初代から2代目は大きく変更が加えられ、A4サイズの教科書がゆったり入るようなサイズへ変更したり、はっ水・防水機能の高い合成皮革を採用するなど、さらに使いやすい仕様になりました。日立市のランドセルは6年間の保証がついているため、万が一、破損してしまった場合でも無償で修理をお受けできます。 ――常にアップデートし続けている印象をもったのですが、その秘訣とは何でしょうか。 ランドセルを使う子どもたちの安心安全を最優先に考えています。例えば、市内の金融機関が新入学生へのお祝いとして防犯ブザーをくださるのですが、それをランドセルに取り付けると金具の位置関係で、手が届きにくいという課題がありました。それを改善しようと、組合の方と話し合いながら改良を重ねた結果、今の仕様が完成しました。今後も問題にはすぐに対応できるよう、相談しながら改良に努めていきたいです。
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誰もが同じスタートラインに立って学校生活を迎えられる
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