目黒蓮『silent』は“瞳の演技”が圧巻、さざ波立つ心情を細やかに表現
聴力を失った元恋人・佐倉想(目黒蓮さん/SnowMan)と再会した女性・青羽紬(川口春奈さん)の揺れる心を描くドラマ「silent」(フジテレビ系)が話題になっています。
本作は人を想う心の尊さと愛すべき愚かさを丁寧に掬い上げた、現代の「賢者の贈り物」とも言うべき作品です。
「好きな声だった。好きな声で好きな言葉を紡ぐ人だった。
名前を呼びたくなる後ろ姿だった。
卒業まであと何回名前を呼べるだろう」
好きな人に声を掛けることも、好きな人の声を受け止めることもできなくなってしまったら、一体どうすればいいのでしょう? すべてを断ち切り、ひとり音の無い世界に籠もるのがいいのでしょうか。
目黒蓮さん演じる想の、あまりにも雄弁な静けさが胸に響きます。
「悲しませたくなかった。このこと知ったら、そうやって泣くと思ったから」
恋人を悲しませたくないあまり、本心を隠して紬を遠ざけた想ですが、ふたりの予期せぬ再会は、はからずも彼と彼を取り巻く人が“そっと黙らせてきたもの”をあぶり出してしまいます。
「再会してもさ、わざわざ、そういうその、障害のあるやつのほう引かないだろ。昔好きだったからって」
これは、想の病気を知った昔の部活仲間がぽそりと漏らした言葉です。そんなふうに思う人も、いないではない。
そんななか、手話を習って必死に“会話”しようとしてくれる紬を見て、思わず嬉しさが込み上げてしまう想。おのずと喜びにまたたく、想の瞳の演技が圧巻です。
想はもしかしたら、たとえ嫌われても紬の中では“彼女の好きな声をもつ自分”のままでいたかったのかもしれません。しかしながら、紬の拙い“手話という声”が、想の築いた静かなる壁をほろりと突き崩したのでしょう。
「目は口ほどに物を言う」と言いますが、翳(かげ)り、また輝く想のまなざし――静謐(せいひつ)にさざ波立つ彼の心情を、目黒さんは実に細やかに表現しています。
目黒蓮の演技に引き込まれる

心情を表現する“瞳の演技”が凄い
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