アパレルショップで働く85歳の女性、毎日ごきげんに暮らすコツって
ごく普通のおばあさんが、79歳にしてアパレル会社のスタッフに。小畑滋子さんが綴るのは、いくつになっても起こりうる小さな奇跡の積み重ね。『85歳、「好きなこと」を続けるごきげん暮らし』(大和書房)は、現在85歳の小畑さんの「お気に入り」が詰まった1冊です。
昭和12年、太平洋戦争の渦中に生まれた小畑さん。少女時代に戦争が終わり、やがて洋裁学校に通うようになります。20代で5歳年上のご主人と結婚、50年以上連れ添って、79歳でご主人を亡くしました。空洞となった心に飛び込んできたのが、『Call』の求人広告。
『Call』とはファッションブランド『ミナ ペルホネン』が運営するショップです。そこに書かれていたのは、「年齢は問いません。人生経験豊富な方、心が健康で100歳!大歓迎です」。失礼ながら、いくら100歳OKと書かれていても、躊躇してしまう方が大半だと思うのです。しかし小畑さんは違いました。生まれてはじめて履歴書を書き、面接を突破し、見事採用されたのです。
子供の頃からおしゃれが大好き、洋裁学校に通った経験もプラスされ、まさに人生経験が実を結んだ結果でした。
『Call』で働きはじめて早6年。出勤は週に2回で、主に接客を担当しています。フロアに立つ小畑さんのファッションが颯爽としていて、思わず真似したくなってしまうほど。「お客さまにも、ほんの少しでも新しい世界を見せて差し上げたい」と小畑さんが言うように、まさに小畑さんご自身が、日々新しい世界を楽しんでいるようなのです。
小畑さんの「おしゃれに見せるコツ」は6つ。本書からまとめると、①シンプルイズベスト。②体形をきれいに見せてくれるものを選ぶ。③必ず試着をしてから買う。④全体の色数を抑える。⑤アクセサリーはユニセックスなデザインが多め。⑥着こなしに工夫する。
流行にはあえてのらず、オーソドックスなデザインでそろえますが、自然素材を中心に、質にはこだわるそうです。着心地がいいと姿勢も良くなるのか、小畑さんの立ち居振る舞いはとても凛としています。体に合う素材や形を吟味することで、仕草や動作まで変わってくるのでしょう。シンプルでオーソドックスなファッションだからこそ、ほんの少し着くずすだけで意外性が生まれるのかもしれません。
グレイのボブヘアにパンツスタイル、時にはワンピース、どれも目を見張るくらい素敵で、おしゃれに年齢制限はないとおしえてくれます。
85歳、現在はひとり暮らしの小畑さん。「ものは少なく暮らす」が、心地よい暮らしの最大のコツだと言います。「いただきものは使わない」というのもおもしろいルールです。家は自分の好きなものだけを置きたいので、頂きものは誰かに差し上げるのだそうです。潔い考え方ですが、使わずに保管しておくだけ、というのもものに対して失礼かもしれません。
その代わり、愛する人たちとの思い出は惜しげなく飾ります。ご主人が作った干支の焼きもの、洋裁学校時代の恩師が描いた絵、ご自身の作品である織物も、センスよくレイアウトされているのです。
週に2回、アパレルショップで働く

日々の暮らし方
1
2