NHK『大奥』福士蒼汰の経を読みあげる“声”にドキリ、恐ろしい響きだった
NHKドラマ10『大奥』の第4話が放送され、<三代将軍家光・万里小路有功編>がクライマックスを迎えた。エピローグにあたる初回からそうだったが、第4話で改めて強く感じられたのが、本作におけるキャラクターと演者との“声”の相性の良さだ。それによって、運命(さだめ)に堕ちていく“人間”の多面的な姿を、わずか3話からなるエピソードでも、強く深く感じさせてくれた。
大奥で身を寄せ合う有功(福士)と家光(堀田)だったが、1年経っても家光は懐妊しなかった。春日局(斉藤)は新たな側室として捨蔵(濱尾ノリタカ)を大奥に呼び寄せ、家光は千代姫を授かる。
笑顔で周囲と接する姿に、「わしらとは出来が違う」と称えられる有功。だが心中は穏やかではなかった。「このお方(家光)こそが自分が救うべき人であった」と道を見出したかのようで、それは相手を救うというより、有功自身にとっての生きるよすがだったのだ。表側はきれいに繕いながら、どんどんと濁った業の深みへ堕ちていく有功。
その深さをはっきりと感じさせたのが、福士の声だ。家光と捨蔵が褥(しとね)を共にする間にあげていた経の声に心底ドキリとした。思い返すに、第2話での有功の登場シーンは、赤面疱瘡で亡くなった農民にあげていた経の声だった。体中に染みわたってくるような、「ありがたい!」と拝みたくなる経を聞いた瞬間、福士の有功に魅了された人も少なくないのではないだろうか。その同じ有功のものとは思えぬ恐ろしい響きを帯びた経。
自らの心をズタズタにしていった有功は、ついに爆発する。それだけでは、抜け殻になっていたかもしれない。しかし玉栄(奥智哉)に苦しみを吐露し、涙として外へと流し、さらに寝たきりとなったお楽の方様(捨蔵)の現状を前にして、自らを取り戻す。日に照らされ(お世話を)「わたしがやる。やりたいんや」と上を向く有功の、すっきりとした顔と声にこちらまで気持ちが晴れやかになった。
堀田は、家光こと千恵の少女期からの成長や、男女逆転大奥の最初の将軍となる重要なキャラクターとして、さまざまに異なる衣裳や髪形を替え身にまといながら、非常に豊かな芝居を見せてくれたが、やはり声も素晴らしかった。
第4話では、捨蔵との子を宿すように言われて、怒りつつもそれを飲み、有功に「きっとわしは子を孕めまい。わしと一緒に死んでくれるか」と、涙ながらに思いを絞り出す姿にはじまり、捨蔵や溝口(押田岳)を見下ろしながら「そなたにわしが抱かれるのではない。そなたをわしが抱くのじゃ」と静かに放ったかと思うと、やがて子を産むと、穏やかさや強さを見せ始めた。
そして周囲へも目を向けられるようになり、政治を司り始めて「この国が滅ぶならば、見届けるまで」と歴然と言い放つ。まさにリーダーたる姿(声)だった。何より、最大の見せ場である、ラストでの女将軍家光として「わしは父の名代、将軍という名の人柱である」との宣言から続く場面は、期待値MAXでかぶりついたこちらを充足感で黙らせる力強さに満ちた声であった。
福士蒼汰の経を読みあげる声の違いにドキリ
期待値MAXでのかぶりつきにも、見事に応えた堀田真由
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