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3度結婚した父、優しかった“父の再婚相手”、13歳離れた弟…芸人・ほしのディスコの「複雑だけど、幸せな家族」

 カラフルな色彩の表紙には、たくさんの星が散らばっている。帯には「お笑いが、僕の人生の全てを救ってくれた。」とある。 パーパーほしのディスコ 星屑物語 タイトルは『星屑物語』(文藝春秋)。著者はお笑いコンビ「パーパー」のほしのディスコさん。芸人さんの軽いエッセイなのかと思いきや、内容は、ほしのさんが今まで誰にも語ってこなかった家族のことや自身の病気のことなどで、きわめてシリアスである。  だがわかりやすい言葉と、軽やかなリズム感のある筆致で、重さを感じながらもさらさらと読めてしまう。そして読後、もう一度読みたいと思える作品だ。

人生の最終目標は自叙伝を出すこと

 本を前にして、ほしのさんは穏やかな笑みを浮かべる。 「子どものころから、人生の最終目標は自叙伝を出すことだったんです。こんなに早くかなってしまったけど、とてもうれしいです。僕、何も考えていないように見られるんですけど(笑)、案外堅実にいろいろ考えているんですよ。僕の人生は小さな目標の積み重ねで,少しずつ進んできたなあと思っています」
パーパーほしのディスコさん

パーパーほしのディスコさん

 優しい温かみのある声と笑みが場を和(なご)ませる。  ほしのさんは1989年に群馬県に生まれた。父は再婚で、10代の息子を連れて母と結婚し、ほしのさんが生まれた。ところが2歳のときに両親が離婚。彼は母の実家で、祖父母と4人で暮らすことになった。母が看護師として多忙だったため、祖父母に溺愛されながら育った。 「今はシングルマザーも多いけど、うちは田舎ということもあって当時はいなかったんですよね。だから授業参観や学校行事でお父さんが来るべきときは、母か祖母が来ていた。他の家と違うのが恥ずかしいというのはちょっとありました。でも、お父さんがほしいとは思わなかったですね。父親の記憶がないから、どういう存在なのかがわからなかった」  ただ、父がいなかった分、母に嫌われたくないという思いは強かったと振り返る。母もいなくなったらどうしようと、わけのわからない不安に襲われたこともある。母に褒められたくてテストもがんばる。そんなふうに思っていたという。

「誰もがいい人」別れた父とその妻とも交流

 ほしのさんの母は、何も隠さない人だった。父の写真を見たこともあるし、兄がいたことも聞いていた。  9歳のとき、別れてから音信不通だった父から連絡があった。ほしのさんの兄が交通事故で亡くなったというのだ。まだ22歳だった。この兄のお葬式で、ほしのさんは実父と7年ぶりの再会を果たした。 パーパーほしのディスコさん 父の2度目の結婚で自身が生まれたこと、その後、父は3度目の結婚をしていたこと、そして弟も生まれていたことなど、なかなかに複雑な家族状況が本には実直に綴られている。  ただ、「誰もがいい人」だったのが彼の幸運だった。複雑であることは決して不幸ではなく、むしろ家族が増えているおもしろさがあると感じられるのは、彼の性格によるものか、軽やかな筆致によるものか。  母と祖父母と暮らしながら、たまに父とその家族とも会う生活。別れた家族がそういう交流を図るのはむずかしいものだが、誰もが正直に生きているからできたことなのかもしれない。本の中では実父とその妻についても、非常に魅力的に描かれている。 「父はたぶん、どこか女性心をくすぐる魅力があるんでしょうね。母も父を支えてあげたいと思って結婚したんだと思います」 【インタビュー後編を読む】⇒「生きていてもつらいだけ」先天性の病気でイジメられた日々…それでも芸人・ほしのディスコが乗り越えられたワケ
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母の再婚と弟の誕生
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