ジブリ最新作で木村拓哉が演じた「父親」が抱かせる“良い意味での拒否感”|『君たちはどう生きるか』
公開中の『君たちはどう生きるか』では、木村拓哉が『ハウルの動く城』以来19年ぶりとなる宮崎駿監督作へ声の出演をしており、その演技に称賛の声が届いている。
その理由を記していこう。
発売中の雑誌『SWITCH Vol.41 No.9 特集 ジブリをめぐる冒険』では木村拓哉へのインタビューが掲載されており、父・勝一という役に向かうまでの試行錯誤や、作品のメッセージの読み解きがとても興味深いものになっている。木村拓哉は自身が演じるキャラクターをこう分析する。
「結局、勝一は眞人(息子)の気持ちを考えていないんです。息子を気にかけているように見えるけど、こうしたら息子が喜ぶだろうなという視点がない。あくまで自分がしたいことをやっているだけなんです」
まさにその通りで、勝一は「学校なんて行かなくていい。どうせろくに授業もしていないんだから」と言うなど、一方的な“善意”を息子に押し付けてくる父親だ。
何しろ木村拓哉の声そのものがヒロイックに聴こえるため、今回のように「相手の気持ちを聞こうともしない」「自分に酔っている」ようなナルシスティックな言動と組み合わさると、良い意味で強烈な拒否反応を起こさせるというのは意外でもあり、同時に納得できたのだ。
この独善的な父親像は、『ハウルの動く城』で木村拓哉が演じたハウルと正反対のようで、実は似ているところもあると思う。
ハウルはいかにもな美青年だが、「掃除も大概にするように、掃除婦さんに言っといて」と少し嫌味を感じさせるセリフも口にしていて、髪色が変わるとヒロインのソフィーへ声を荒げたうえで、「もう終わりだ……美しくなかったら生きていたって仕方がない……」とまで言ったこともある。
こちらも木村拓哉の声そのものがカッコよく、つい「騙されそう」になる魅力があるからこそ、些細なことで絶望する演技とのギャップが際立っている。
この時のハウルの言葉は、ソフィーを「私なんか美しかったことなんて一度もないわ!」と怒らせるし、それにはやはり共感できる。『君たちはどう生きるか』の勝一と同様に「自分のことしか考えていない」キャラクターを、木村拓哉は見事に表現できるのだ。

久石譲「君たちはどう生きるか サウンドトラック」(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
「自分がしたいことをやっているだけ」な父親への拒否反応
『ハウル』での「騙されそう」になる魅力とのギャップ
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