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不妊治療ブログ主が帝王切開で産んだら「無理に産んだから」「障害は母親の責任」読者たちが手のひら返し

―連載「沼の話を聞いてみた」― 「“無痛”分娩で失うものを問うー赤ちゃん、ママ、社会の視点からー」ーー10月に開催された日本助産学会のシンポジウムで、こんなテーマの講演が配信されたという。すると宣伝ポスターらしきものを引用する形で、X(旧Twitter)から反感の声が多数上がった。
自然な妊娠出産沼202311

※写真はイメージです(以下同)

筆者はこの講演を聞いていないのであくまで想像の前提で恐縮だが、専門家が集うシンポジウムにもかかわらず無痛分娩に伴う麻酔のリスク云々というより、「お産は自然であるのが望ましい」という価値観の話かなと思った。「失うもの」とあるので、無痛分娩のネガディブな面が少なからずとも取り上げられたのだろう。 シンポジウムでこんな話が出たかどうかはわからないが、巷では「自然なお産」の文脈で、無痛分娩や帝王切開を否定する、次のような根拠なき言説が存在する(もはや都市伝説レベルの話だ)。 「陣痛を体験して痛い思いをしないと、親になれない」 「無痛分娩でラクをすると母子の絆が希薄になり、後でツケがくる」 「帝王切開で生まれた赤ちゃんは体が弱い。何かしらのリスクがある」 「無痛分娩で生まれた赤ちゃんは自閉症・発達障害になりやすい」 「無痛分娩で生まれた赤ちゃんは不機嫌なことが多い」

自然なお産をした著名人の影響も

そうした界隈では、帝王切開や無痛分娩は「他力本願」と貶められがちなのも、ひどい話だと思う。 障害を持つ子の母である田原真由子さん(仮名、40代)も、帝王切開で出産したことを引き合いに「“自然じゃない”方法で生むからだ」と心無い言葉を投げつけられた。 「自然なお産」は、産婦人科医である故・吉村正氏が中心となって盛り上がったムーブメントで、一時期の勢いはなくなったものの、アーティストのコムアイさんがアマゾンで出産したり、タレントの吉川ひなのさんが水中出産したりといった出来事に象徴されるように、一部の女性たちから支持されているのがわかる。 そうしたコア層だけでなく、自然信仰はさまざまなイデオロギーやビジネスとも混ざり合い、広く浅くあらゆるところに入り込んでいるので、聞きかじりで「なんとなくそういうものだ」と思っている人も多そうだ(真由子さんを罵倒した人たちはおそらく後者だ)。

はじまりは、不妊治療中の共感

真由子さんが「“自然じゃない”からツケがきた」と罵倒されたきっかけは、ブログである。当時はブロガー全盛期。 自然な妊娠出産沼202311文章を入力するだけでブログとして公開できるというサービスが2003年に「ライブドアブログ」「はてなダイアリー」ではじまり、翌年にはアメブロが登場している。真由子さんもそのブームに乗っかり、2008年にブログを開設したひとりだった。 真由子さんが書いていたテーマは、不妊治療とがん闘病。 「私の体験が、いつか同じ立場になって悩む人の体験になってくれますように」 そう思い、はじめたブログだった。不妊治療と闘病。深刻なテーマなので、ノリは軽く楽しくハッピーに! そんなことを心がけながら、サービス精神も手伝って、赤裸々にテンポよく、毎日の生活や病状をつづっていった。
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自分が身内が友人が沼ったご体験談を募集中です。当連載における沼とは、科学的根拠のない健康法やマルチ商法、過激なフェムケアや自然派思想など、主に健康問題に関わるものにハマることを示します。「女子SPA!」のお問い合わせフォームより、題名に「沼の話」と入れて、ぜひお気軽にご連絡ください(お返事に時間を頂戴する場合もあります)。
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