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『不適切にも』ヤンキー女子で注目の若手ナンバーワン俳優、次に薬物中毒を演じた“媚びない”凄みとは

『不適切にもほどがある!』(TBS系)の80年代ヤンキー女子高生役で大ブレイクした河合優実はいま注目の若手俳優ナンバーワンだ。主演映画『ナミビアの砂漠』(山中瑶子監督)が第77回カンヌ国際映画祭で批評家連盟賞を受賞したことも追い風になっている。

河合とはまるで違う凄み『あんのこと』

トーク番組『僕らの時代』(フジテレビ系)に河合優実が出ていたので、おお、これは見なくてはと録画して臨んだ。面子は青木柚と見上愛という23歳の同世代同士。かつて『僕らの時代』に出たいと話したことがあり、それがかなったことを3人で喜ぶ。若手注目株の3人は前途洋々として、でも決してブイブイいわず、ニュートラルに前向きで、お互いにやさしく、とても清々しい。
ふだんは演技の話をしないという3人が、この番組だからこそと、演技の話に踏み込んだ。 河合優実主演作『あんのこと』(入江悠監督)での彼女の芝居について。見上が、河合演じる杏の河合とはまるで違うとパニックみたいになったと感想を述べる。パニックとはかなりの反応だが、筆者も試写を見て確かに河合のたたずまいに凄みを感じた。

実話をもとになっていると知らなかったら、悲劇にもほどがある!

『あんのコト』は、実在の人物とその人物にまつわる事件をもとにした映画で、新聞記事を見たプロデューサーが入江監督に映画化を打診し、記事を書いた記者に取材したうえで脚本を練ったものだ。 あんのこと主人公・杏は母(河井青葉)と祖母(広岡由里子)、3人での団地暮らし。母は体を売って稼ぎ、祖母は足を悪くして寝たきり。恵まれない環境下で、杏は中学までしか行けず、母と同じく体を売り生活費を稼ぎ、薬物中毒になって荒れた生活を送っていたところ、逮捕される。 担当刑事・多々羅(佐藤二朗)に紹介された自助グループに通うようになったことをきっかけに杏は徐々に自分の生活を建て直していく。多々羅を取材しているという記者・桐野(稲垣吾郎)も加わって、杏は人々の支えによって、実家を出て自立をはじめるまでになる。 あんのことだが、未曾有(みぞう)のコロナ禍がはじまり、仕事を失い、多々羅に問題が発生し頼れる人も失ったりと前途は多難。さらに、母から祖母がコロナに感染したかもしれないから家に戻ってほしいと連絡が入り……。 実話がもとになっていると知らなかったら、悲劇にもほどがある!と思ってしまいそうなほど杏の人生は暗い。救いに感じたある部分はフィクションだったとプレスを読んで驚いたくらいだ。 日陰ばかり選んでいたかのような杏が、日なたに足を踏み出そうとする。世界には光と影が必ず存在するけれど、光を選びとることは誰にでもできるはずなのだ。いま、暗闇にいる者は光に向かう希望があるし、いま、暗闇にいないで済んでいる者は、暗闇にいる者に手を差し伸べる配慮をもちたいと映画を見て思う。
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薬物中毒による虚無感をどう演じたか?
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