バラエティに引っ張りだこだった36歳女優が、“かつてのトレードマーク”を手放して得たもの
かつて、中村アンが中村アンである所以は、おそらくあのかきあげヘアーにあった。それが今はどうだろう?
2024年6月13日に最終話を迎えた6年ぶりの主演ドラマ『約束 ~16年目の真実~』(読売テレビ・日本テレビ系)での中村を見て、ショートヘアへの転換が、ここまで悦に入るものかと思った。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、中村アンのキャリアを振り返りながら、「本作の主演で得たもの」を解説する。
渋谷駅新南口。都会の喧騒からちょっと離れたところに、女性タレントが多数所属する芸能プロダクション「プラチナムプロダクション」のオフィスがある。筆者は一度だけ取材で訪ねたことがある。
渋谷のオフィスビルというと、あまり空気がよくないイメージがあるが、ここのオフィスはすごく澄んだ空気。『オオカミ少女と黒王子』(2016年)で山﨑賢人の姉役で出演していた菜々緒を初めてスクリーン上で観たとき、彼女はどんな優美な事務所に所属してるんだろうかと想像したが、その意味ではほんとうにうなづけた。
菜々緒ともうひとり、トップランナーとして中村アンが所属している(現在は同プロダクションが2024年に設立した新会社UNiQUEに菜々緒と中村は移籍)。なるほどなぁ。芸能プロダクションのカラーというのを所属タレントがここまで明確に染め上げているのだ。
透き通る社風とともに、中村アンの色っぽさがそよ風のように吹き抜ける。というか、中村自体に風が吹きつけていると言うべきだろうか。と言うのも、一時期、彼女のトレードマークとなっていたのが、前方から吹きつける風によってかきあげられたようなヘアースタイルだったからだ。
あの髪の毛先まで、中村の色っぽさを最大限演出していた。でもそんなイメージは、下積み時代に苦労を重ねる中で編み出されたもの。18歳のとき、初めてスカウトされ、その後すぐ芸能界入り。大学生だった当時から現在の事務所に所属している。
今でこそ、俳優のイメージが強いけれど、最初はワンオブゼムなタレントに過ぎなかった。仕事はあまり入らない。当時は実家暮らしで、肩身が狭い思いだっと朝日新聞デジタルのウェブマガジン「&」のインタビュー(2021年1月29日公開)で語っている。