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ピコ太郎が支援続ける小児がん。“プロデューサー”が明かす実情とは「本当はもっと国に助けてほしいけど……」

「ピコ太郎」のプロデューサーとして知られる古坂大魔王さん(51歳)は、2018年に小児がんで早世した女の子・あいりちゃんと出会ったことをきっかけに、小児がん治療をサポートするためのチャリティー活動に積極的に取り組んでいます。 古坂大魔王さん 2月15日の「国際小児がんデー(International Childhood Cancer Day)」に合わせ、小児がん治療の課題や、必要とされている支援などについて古坂さんに聞きました。

小児がんの発見が遅れるのはなぜ?

――小児がんになると、どんなことが大変なのですか? 古坂大魔王さん(以下、古坂):子どもは大人のように健康診断や人間ドックを受ける機会がありません。だから、がんが見つかったときには多くの子どもたちがステージ3(リンパ節などへの転移が見られる状態)からステージ4(遠隔臓器やリンパに転移が見られ、治療が難しい状態)なのだそうです。そのため、治療がより困難になってしまうんです。 それに抗がん剤治療は、大人でも耐え難いほどつらいものです。がん細胞を死滅させなければいけないけど、子どもの命も守らなくてはいけないわけですから、子どもの抗がん剤治療は調整がすごく難しいと聞きます。 そしてやはり大変なのはお金です。保険適用の治療であれば国が上限付きで助成してくれますが、保険適用外の治療や差額ベッド代、交通費などは自費になるため、莫大な出費に悩む親御さんがたくさんいます。 日本でできる治療では手の施しようがなくなり、未承認薬を使いたいけれど承認されるまで何年も待っていたら我が子の体が持たない。そこで親御さんは海外へ渡ることを考えますが、薬代だけで何千万円もかかったりするんです。自分たちだけで払えるわけがありませんよね。本当は国にもっと助けてほしいのですが、残された時間がないので自分たちでクラウドファンディングなどを立ち上げ、お金を集めるしかありません。 ――小児がんの子どもたちを支援するためには、何が大切だと思いますか? 古坂:何よりも、まずは認知度を上げることだと思います。新しい治療薬を開発してもらうためにも、お金を集めるためにも、世の中にもっと知ってもらわないといけない。小児がんの子どもは約7500人に1人と割合としては少ないし、今まさに病気と闘っているので自分たちで声を上げる術がありません。だから認知度を上げるためには、芸能人が一番いいんですよ。僕は医者でも何でもないから治すことはできないけど、適材適所で、道化師としてその役割を果たしたいなと思っています。

「せっかく生まれてきたんだから、人生を少しでも豊かにしたい」

古坂大魔王さん――エンターテイナーとして、小児がんの子どもたちの支援に関わることに、どんな意義を感じていますか? 古坂:認知度を上げること以外にも、実はエンタメそのものに相当意味があるんじゃないかと思っています。2014年に肺がんで亡くなった「東京プリン」という男性デュオの牧野隆志さんは、余命宣告された後もテレビに出続けたんです。本人曰く、そうすることで余命がどんどん伸びたんだと。「お笑いライブを見ると、痛みが減っていくんだよ」とも言っていました。だからお笑いをやることで、少しでもつらさを軽減できれば、ひょっとしたら治るかもしれない。いや、治らないかもしれないけど、せっかく生まれてきたんだから楽しませたいし、人生を少しでも豊かにしたいなと思っています。 ――日本では、チャリティの文化がなかなか根付かないと言われていますが、なぜだと思いますか? 古坂:日本には良いところがたくさんあります。一番は国民皆保険です。これは世界に誇れることだし、お年寄りと子どもは医療費はほとんどかかりません。あと、共感能力が高いこと。だから一般的な病気には強いし、平均的な人たち同士では共感することができます。でも一方で、飛び抜けている人や、極端に弱い存在に対しては排除しようとする傾向があると感じます。弱っている人を助けようとすると、「カッコつけやがって」と言われてしまったりする。災害時の募金でも、10円寄付した人は何も言われないけど、100万円寄付すると一部の人たちから叩かれてしまいます。
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チャリティは贅沢品?「偽善者」との批判も
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