総再生回数16億回超え! 青春ショートドラマ『まいはに』、驚異的ヒットのワケ
日本テレビの青春ショートドラマ『毎日はにかむ僕たちは。』(以下、『まいはに』)が、Z世代の間で大ブームに。累計再生数はなんと16億回を突破し、Z世代の4人に1人が視聴するという驚異的な人気を誇っている。
――『まいはに』のプロジェクトが始まった経緯を教えていただけますか?
井上直也氏(以下、井上):昨今、短尺・縦型動画を手軽に楽しむ習慣が広がり、コンテンツが増える反面、一つのコンテンツに割ける時間が減少しています。そうしたタイムパフォーマンスが求められる時代に、SNSのなかでもTikTokが最も没入させられる可能性が高いと思い、2023年3月に『まいはに』の配信を開始しました。
TikTokはアプリを開くとすぐに音声付きの動画が再生され、短時間で強いインパクトを与えることができますからね。
――最近の縦型動画でいえば、YouTubeショートやInstagramリール、Voom、Xのフィードも注目されていますね。
井上:たしかに別のプラットフォームでも技術的には模倣できますが、TikTokのカルチャーまで再現することは難しくて。ほかの縦型動画では代替できない要素が多いんですよ。
――そうした多様なコンテンツがあふれるなかで、『まいはに』がZ世代の4人に1人が視聴する一大コンテンツとなった理由は何だと思いますか?
井上:『まいはに』の強みは、「あったかもしれない」というテーマをよくも悪くもリアルに描写したことです。青春のもどかしさをドラマとして表現することで、視聴者が共感できる内容になっていて、「私も同じ経験があります!」「最近のできごとを思い出して泣いてしまいました」といったコメントが多く寄せられていますね。
――そのほか、寄せられるコメントにはどんな特徴があるのでしょうか?
井上:コンテンツに対する共感のコメントももちろん多いですが、それ以上に潜在的な共感が広がっていると感じます。たとえば、僕自身は部活で頑張った経験がないので、部活で泣いている姿を見ても直接的な共感はありません。ただ、何かに打ち込んでうまくいかなかった時の感情には共感できます。それが『まいはに』の魅力なんですよ。
平岡辰太朗氏(以下、平岡):仮に「BeReal(※)」をテーマにしたとき、40代の人にはビーリアルが何かわからないかもしれません。でも、その奥にある「共感させたい部分」は変わらないんですよ。
自己承認欲求や他者との共有欲求という、根本的な欲求は年代を問わず共通しているので、そこには共感できるポイントがあるはずです。一方で、「ビーリアル」というだけで興味を持たない人も一定数いるでしょうけどね。
※「リアルな日常を友達と共有する」ことを目的としたアプリで、Z世代に人気
今回は、『まいはに』のプロデューサーである日本テレビの平岡辰太朗氏と井上直也氏に、プロジェクトの見どころや届けたい想いについてインタビューを行った。
『まいはに』人気の理由は、よくも悪くもリアルな描写にあり

※イメージです(以下同)
Z世代のクリエイターだからこそ生み出せる雰囲気

井上:そのリアリティを追求するために、制作現場では「こういう経験あったよね」といった話が飛び交い、スタッフも20代が多く、その感覚を共有しながら作り上げています。また、俳優たちも感情表現が上手なため、リアルな演技が見せられるんです。平岡さんはどう思いますか? 平岡:井上が言ったように、大人が作ったものではない等身大のクリエイティブが受け入れられているのだと思います。実際には大人が関わっていますが、TikTokは「ごっこ倶楽部」と呼ばれる10代後半から20代前半のクリエイターたちと一緒に制作しています。 大人が作ると、どうしても若者の文脈についていけない部分が出てきます。僕自身34歳ですが、その感覚を完全に掴むのはとても難しくて……。だからこそ、若者が主体となって作ることで視聴者も共感しやすく、再生数も伸びているのだと思います。 ――ちなみに、企画から配信まではどのような流れなのでしょうか? 井上:縦型と横型で事業パートナーが異なります。縦型は「ごっこ倶楽部」と共同制作していて、スポンサー関係以外は従来の脚本を大きく変えることはありません。但し撮影や投稿後の結果をしっかり振り返ることを大事にしています。 TikTokのインサイト機能で「離脱時の秒数」や「リーチ数」などが見られるので、右脳と左脳をバランスよく使いながら進めています。横型に関しては「NUTS FILM」という別の会社と共同で、同じような方法で制作しています。