検証・ベビーカー論争はなぜ起きた?【後編】

前編に続き、「『女子学』サミット春の陣 ~今、そこにある女子問題語ります~」をリポート。テーマの一つ「ベビーカー論争はなぜ起きた?」の議論をご紹介しましょう。

⇒【前編】ママ叩き”と世代間闘争 http://joshi-spa.jp/13867

子育て女性はマイノリティか”勝ち組”か



白河:ベビーカー論争にしても、女性の雇用問題にしても、旧・既得権益層とそうじゃない層との闘いだな、と思うんです。「女は家で子育てしていろ」という既得権益層と、そうではない新しい世代との対立。それが全部の根本にある。

常見:「昭和VS平成」みたいな世代対立の構図があるのかなぁ、と思いますね。

女子学サミット

会場には、女性、男性、お子さん連れのお客さんも

水無田:実は今、子育て世帯ってマイノリティなんですよ。今や、一番多いのは1人暮らし世帯ですから(32.1%、2010年国勢調査)。

白河:6歳未満の子供がいる世帯の割合って、10%切ってますよね(9.4%、同)。

西森:たしかに子育てをしている人はマイノリティかもしれないけど、マイノリティだからこそ希少性があると思われることもあるのかも。逆に未婚で子供もいない人たちも数という意味ではなく、立場としてはマイノリティだと思っているんじゃないかと。というか、そもそも、今って誰もかれもがマイノリティ意識を持ってるのかもしれません。

 そういうことをふまえると、子供のいる女性たちは、数的にはマイノリティだけど、一方では、優秀な“特権階級”のように見えているのかもしれません。もちろん、苦労しているお母さんたちがたくさんいるのもわかるけれど、イメージではそれが勝ってしまっているんじゃないかと。

 それから、朝の通勤電車の異常なまでの混み方を経験すると、すごく殺伐とした気持ちになるのは納得できます。あの電車に乗っていると、ベビーカーでなくても、もう誰もかれもがお互いの邪魔になっているという感じですよね。今って、ベビーカー論争に限らず、立場の違う人への理解がしにくい社会になっていると思います。個人的な感情が理由になってるだけではなくて、それぞれが分断するような仕組みができあがっているんじゃないかと。

 だから、いろんな局面でそういう不寛容な心情が噴出しちゃっていて、ベビーカー論争もそのひとつなのかもしれません。だからと言って、ベビーカーのお母さんたちのことはを責めるのはもちろん違うんですけど、論争になる背景ってそういうところがあるのかなって。

水無田:今の西森さんの話は重要ですね。子連れの母親って、“マイノリティだと思われていないマイノリティ”なんですよ。障害者やお年寄りを“邪魔だ”とは誰も言いませんが、母親に対しては“自由意思で産んだんだろ”という雰囲気があります。恵まれている標準世帯、多数派だと、いまだに思われている。

西森:多数派じゃないということは、以前は普通にできていたことだけれど、今は、人々がそこに達するのが難しくなっているということですよね。だから“マイノリティだと思われていないマイノリティ”だと認識されてしまうんじゃないでしょうか?

常見:“マイノリティって何だろう?”問題ですね。マジョリティだと思われていた人たちが、いつの間にかマイノリティになっている、というのは新鮮な視点です。

西森:マイノリティなのに、なぜそう思われないかと考えると、「結婚して子供を産んだ女性は“勝ち犬”だ」「そうじゃない女性は“負け犬”だ」と言っちゃったことが大きいと思うんですよ(『負け犬の遠吠え』2003年、酒井順子著)。酒井さんはそういうつもりではなかったけれど、受け取られ方として独り歩きしてしまったのかもしれません。

女性を縛るのは「男の目」?「女の目」?



水無田:上野千鶴子さんが『おひとりさまの老後』で書かれていたのですが、成功して独りで邸宅に住んで優雅に暮らしてる女性に対して、周りの男の人が「あんな豪華な家に住んでも独りじゃ寂しいよな」みたいに言うそうです。ほっといてくれ、と。なんで勝手に人の幸福を決めるんだ、と。

 逆に私なんか子供がいても、非常勤夫婦世帯なので正規雇用の人よりも認可保育所などの優先順位は低いですし、しかも実母も亡くなっていて義母も病気で子育てを手伝ってくれる家族もほとんどいないですし、普段夫ともども綱渡りで子供を育てていて、すっごく大変だという話を散々したあと……「お幸せそうですね」とか笑顔で言われるんですよ(笑)。話聞いてるのか!?と。

 そういう反応は、ある年代以上の男性に多いですけどね。どんなに大変な生活でも子供さえいれば幸せで、どんなに自分が満足してても一人暮らしだと寂しそう、って言われちゃうのが女性なんですよ。

ハピネス

タワーマンションでの“ママ友カースト”を描いて話題の『ハピネス』(桐野夏生著、2013年)。なんと『VERY』での連載

西森:でも、それは男性からの目線だけではないと思いますよ。さっきの独り身の女性にしても同じだと思いますが、どこの立場にいても、全部が満足という状態はなりたたないし、それぞれに解決できない問題がたくさんあって、その問題はそれぞれの立場で違います。

 そういう問題って、立場が違うとどうしても理解しにくい。同性間でも立場によって理解できないことがあるから、女性同士がお互いをうらやましいとか、ここは私のほうが勝ってるわって思う状態ができて、自分たちで自分たちを縛りつけることも多くなってくると思います。ほら、客席の人がすごいうなづいてるじゃないですか(笑)。

白河:一方で、私は今「妊活」を提唱していて、いろいろな大学への出張講座で「産みたい人は正しい妊娠の知識を知ろう」「働きながら産み育てよう」と説いてるんです。というのは、やっぱり子供だけは後から絶対手に入らないものだという希少性があるからなんですよ。若くして妊娠した人って、意外とその希少性に気づいてない。これはもう本当に、世代間対立してる場合じゃないんですよ。

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 このあとも白熱した議論が続き、ゲストとしてAV監督の二村ヒトシさんも登場しました。時間切れで話せなかったテーマもあり、「第3回目もやりましょうか?」という常見さんの発言に、会場は大拍手。というわけで、第3回目は7月上旬に開催されるそうで、詳細が決まり次第、また女子SPA!でもお知らせします。

【女子学サミット メンバー】

白河桃子さん●1961年生まれ。会社員を経て文筆家に。『婚活時代』(共著)を始め著書多数、近著に『妊活バイブル』(共著)など。東京女子大等で非常勤講師を務める


水無田気流さん●1970年生まれ。詩人であり社会学者、東京工業大学世界文明センター・フェロー。著書に『音速平和 』『無頼化する女たち』など



西森路代さん●1972年生まれ。会社員を経てフリーライターに。アジア系エンターテインメントなどについて執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』など


常見陽平さん●1974年生まれ。会社員を経て人材コンサルタントに。著書に『女子と就活』(白河さんとの共著)『僕たちはガンダムのジムである』など。実践女子大学などで非常勤講師

<TEXT/槍田創 ILLUSTRATION/Nataliya Yakovleva>

ハピネス

タワーマンションでの“ママ友カースト”を描いて話題




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