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お金をかけないおしゃれとは?ファッションの古典『チープ・シック』の教え

 時代はまさにファストファッション全盛。新たなデザインが次から次へと投入され、しかもそのどれもがお手頃な値段。というわけで勢いで買ってみたはいいけれども、何となく気に入らない。「それいつ買ったっけ?」というような服でクローゼットがあふれているなんてことはないでしょうか。  かといってなんでもかんでも高額なものならばいいというわけでもない。たとえばプロ野球選手のファッション。テレビに映し出された私服姿を見て「うわ、、、、」と引いてしまったという人も多いのでは。ひとつひとつのアイテムは間違いなく高価なのに、トータルとして全くそう見えないというのは実に悲しいことです。  じゃあいったいどうしたらいいの? おしゃれって何なの? そんな疑問に対する一つの答えを示してくれそうなのが、今から37年前に発売された『チープ・シック―お金をかけないでシックに着こなす方法』という本。昨年9月までに19刷の発行を数える、静かなロングセラーなのです。 お金をかけないおしゃれとは?ファッションの古典『チープ・シック』の教え

何を着ようかあれこれ悩むのは、おしゃれじゃない

 本書のコンセプトは明瞭。毎日何を着ていこうか悩まないことこそが、おしゃれへの近道。 「もっともファッショナブルな人は、ファッションからもっとも遠い人。」(画家リチャード・マーキンの発言)  なんだか禅問答のようですが、それなりの値段がしても一生かけて着られるクラシックなものをいくつか用意しておけば、その悩みから解放されるというのですね。そのとき買った値段が高くても、長い年月繰り返し着られるものであれば、それを着た回数分で割ると実は割安になる。そういう考え方なのです。

クラシックな服は、服自体に注目を集めたりしない

 それでは“クラシックなもの”とはどんなものなのでしょうか。著者のカテリーヌ・ミリネアとキャロル・トロイは簡潔にこう定義しています。 <仕立てのいい、最高品質の服で、 その服じたいに人の注意をあつめたりしない服。>(片岡義男訳)  たとえばブライアン・デ・パルマ監督の映画『アンタッチャブル』を観るとき。街並みや車のデザイン、さらには建物の色に溶け込むような洋服を着た登場人物が映し出されたときの安心感といったらありません。それもまたクラシックのひとつの形と言えるのでしょうか。 ※編集部注:『チープ・シック』にも写真が載っている、アメリカの女優でファッション・アイコンのローレン・ハットン。以下のサイトで、まさにチープ・シックな彼女の写真が見られます。http://harveyfaircloth.com/blog/hf-icon-lauren-hutton/

なるべく無地のものを選ぶ

 『チープ・シック』では、そこへたどり着くヒントをアンティークやスポーツウェア、果ては作業着のデザインや機能性の中に見出していきます。全てモノクロではありますが写真や絵もたくさん載っていて眺めているだけでも楽しい本です。いま見てもそんなに古いと感じないのは、装飾やアクセントで奇をてらうことのない確かな普遍性があるからでしょうか。  そして何よりも実際にチープ・シックを実践している人たちの言葉が参考になります。ファッション雑誌の編集者やフォトグラファーから学生に至るまで、本書では多くの人にファッション哲学を取材しています。そんな彼らが共通して主張するのは、カネをかけるべきは靴とアクセサリー。そしてなるべくプリント柄を避け、無地のものを選ぶこと。  そこさえ押さえておけば、シャツやパンツなどは古着屋で済ませても大丈夫だというのです。  しかしそんなシンプルな装いを支えるのは、やはり何よりも自分自身。著者は前書きで、その前提を明確にしています。 <健康な、はつらつとした体を維持するには、特別な秘訣なんかありません。 でも、まず大切な第一歩は、自分に対してすこし厳しくなることです。>  まずはシンプルな装いでも大丈夫だという自信、そして周囲にもそう思わせる人間になりなさいということなのですね。そうすれば、クラシックやベーシックとは何なのかがおのずと見えてくるのかもしれない。  そして何の変哲もない服が似合うということこそが、実は一番難しいのかもしれない。そんな深遠なテーマも頭に浮かんでくるような、実に味わい深い一冊です。 <TEXT/比嘉静六>
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チープ・シック―お金をかけないでシックに着こなす法

1975年、アメリカの2人の女性ジャーナリストによって書かれた本書は、自分自身を生かす新しいおしゃれの考え方について提案しているが、それは21世紀になった今でも十分通用するものであり、色あせるどころかかえって新鮮である。




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