慰謝料、養育費…夫婦最後のシビアな約束ごと【シングルマザー、家を買う/第2章・後編】

【シングルマザー、家を買う/第2章】

バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。

⇒【前編】はコチラ http://joshi-spa.jp/176781

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養育費、慰謝料が滞ったらどうなる?



 そして、公正証書作成の当日、しっかりと作られた証書を前に、久しぶりに会った元旦那と私が並んだ。この日もおじいちゃんの声はかすれていた。

 そこで養育費、慰謝料、持っていたマンションのこと、親権など気の遠くなる話を延々と2人の前で確認させられた。しかも、小学校みたいに音読させられた。明らかに元旦那にとってはしんどい時間だろう。もう離婚する人とはいえ、一度は家族になった人。なんだか同情してしまうところもあったのも事実。

 ……でも、子供2人を育てるのは私なのだ。同情するなら金をくれとはまさにこのこと! 同情されているのは元旦那のほうだけど。

 公正証書の恐ろしいところは、養育費、慰謝料が3回滞ると、“強制執行”がかかるということ。普段の生活で強制執行なんて怖い言葉は身近で聞くことはないだろう。でも、この日はこの小さな部屋のなかでこの言葉が何度も何度も繰り返された。

 その後、一拍おいて、おもむろにおじいちゃんが立ち上がった。

 そして、完成した証書の正本が入った封筒を私の前におき、私を指差した後に、おじいちゃんは急に大きな声で言い放ったのだ。

「あなたは、A(元旦那の名前)さんに強制執行できる!」

 そして、元旦那の前に標本を置いて、視線と指先を元旦那にロックオン。

「あなたは、吉田さんに強制執行でき……ない!」

筆者/公証人/元旦那

 そのときのお腹の底から出たクリアな声といったら!

 元旦那、沈黙。

 するとすかさずおじいちゃんはちょっとイラッとしたように、元旦那に絡み始める。

「あのさ~、聞いてる? 強制執行、されちゃうよ!」

 マンガでしかこんな人見たことない。すごい破壊力だ。

 お酒が入っているのだろうか。いや、表情は真顔だ。

 きっといつもおじいちゃんはここをハイライトとして生きているのだろう。

 それなら仕方ない。少し見守ろう。おじいちゃんの楽しみを奪ってはいけない。

 元旦那はコクリとうなずき、その場は納まった。

 公正証書代として5万円近くを支払い、そこで私たち夫婦最後の約束事が決まった。

 安心はできないけれど、ひとつ大きなことは終わったのだ。

 きっとあのおじいちゃんの言葉のおかげで、元旦那はきっと踏み倒すようなことはしないだろう。実際、あれから3年の月日がたっているが、毎月25日はキレイに決められた額が振り込まれている。

 おじいちゃん、ありがとう。

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>

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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky

※次回更新は1月7日を予定しています。

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>

シングルマザー、家を買う

年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える!

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