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「家を、家を私に売ってください!」。ママは絶対あきらめない【シングルマザー、家を買う/5章】

<シングルマザー、家を買う/第3章>

バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。

(前号までのお話)離婚届を市役所に出し、その足で訪れた不動産屋A店。子供を路頭に迷わせないために家が欲しい!と意気込むも、貧乏人には無理、とばかりに門前払いされてしまう。悔し涙も乾かぬうちにダメモトで大手不動産M店に向かった――。

興奮する私に、お姉さんは「キョトン」



 すでにどっぷりと日が暮れ、真っ暗になった道にポツリと浮かび上がる不動産屋、M店。そのドアを勢いよく開けると、中からキレイなお姉さんが出迎えてくれた。店内を見回すと、さきほどのA店とは雰囲気が違う。すごく洗練されているのだ。

 すでにA店に対し敵対心しかない私は、同業のM店がすべて素敵に見える。同じ観葉植物でさえも生き生きとしているように見える。もしかしたら、ここなら母子家庭を救ってくれるかも…。

 でも、待て。まだこいつらは私の敵かもしれない。貧乏人の敵かもしれない! そう、はやる気持ちを必死に落ち着かせながら様子を伺っていると、そのキレイなお姉さんは優しい声で目を真っ赤に腫らした私に話しかけてきた。

「どうかなさいましたか?」

ちょっと待て。まず、それか!? そこは「いらっしゃいませ」じゃないのか?

 ていうか、どうもこうもない。ここは不動産屋だろう!? 私は家を買いに来たんだ。ここはスーパーじゃないだろう!

 A店に門前払いされたショックがぬぐいきれず、全身の毛が逆立ち、興奮気味の私の中の私が心の中でそうつぶやくが、そこは来月30歳になる大人の私が顔を出す。

「家を…、家を私に売ってください!」

 その時のお姉さんの顔を、私は一生忘れないだろう。人間の“キョトン”ってああいうときにするんだと。“キョトン”としたお姉さんの顔を見た瞬間、私も“キョトン”となった。

 え? 違うの? ここ、不動産屋だよね?

「家を、家を私に売ってください!」。ママは絶対あきらめない 強気だったのにいきなり挙動不審になった私を見て、お姉さんは急にあたふたしだし、「少々お待ちください」と奥に入っていった。

 それから数分。私の心は丸腰で敵地に入った兵士のように怯えだし、またバカにされて断られるんじゃないかとすでにビクついていた。でも、そんなことではシングルマザーの名が廃る!

 まだシングルマザーになって1日しか経ってないけど、なぜかそこは誇りに満ちていた。そして、それと同時に、私の心の芯は強くなった。ビクついてたらこの子達に家を与えてあげられない!

 鼻水をたらしながらのんきにノンタンの絵本を読んでいる娘を穴が開くほど見つめ、「ママ、絶対にやったるからね!」と意気込むのだった。

⇒【後編】「不動産屋の“熱い男”に恋をしそう」に続く http://joshi-spa.jp/183102

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>

⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】

【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky

吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky
シングルマザー、家を買う

年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える!

シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。




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