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「毎日吐いていた…」 母に逆らえない一人っ子【こじらせ母娘】

 みなさんは母親との関係、うまくいっていますか? 最近、「母が重い」「母との関係がしんどい」と告白する女性が増えているんです。 『母を許せない娘、娘を愛せない母―奪われていた人生を取り戻すために―』(ダイヤモンド社)の著者・袰岩秀章氏にお話を伺い、母娘問題に関して見られるパターンを兄弟構成別に教えてもらいました。

母に囲い込まれてしまう「一人っ子」のパターン

「『もうこの子だけで十分。きっと私のことをよくわかるはず』。一人っ子の母親は、意識はしていなくとも、自分の子どもを自分の味方として自分に都合のいいように取り込んで育てるケースがあります。  娘からすれば、守られているし可愛がられているから、なかなかその緩やかな檻から出にくい。出ようとしても怖くて出られない。母親は、子どもに過保護にかかわりながら、娘を檻に囲い込んで安心する。この場合、主導権は母親にあります」  以下、袰岩氏のもとを訪れた女性のケースとそのカウンセリングの様子を紹介します。 こじらせ母娘=============== <30代前半女性・Aさんのケース> 「今度結婚するので、摂食障害をなんとかしたい」と相談に訪れたAさん。過食嘔吐の症状があり、毎日胃の中のものを出し尽くして気を失いそうになるレベルでした。  摂食障害は、きっかけとしてダイエットや人間関係などがよく挙げられます。彼女は摂食障害の本をよく読んでおり、はじめは「どれもあまり当てはまらない。『痩せなくちゃ』という感じではなく、失恋のショックから気を紛らわすために始めた」という言い方をしていました。  体重が減るという達成感により、拒食や過度なダイエットへと後押しされてしまうことがありますが、彼女の場合は“なにか言われると嬉しい”、それが快感になってハマったようでした。食べたものを吐いていると「痩せたね」「どうしたの?」と、周りから気遣われるわけです。  習慣化というのは難しいもので、われわれはクセになると止めにくい。これが摂食障害が治りにくい理由のひとつですが、拒食や過食をすぐに止めることは難しいけれど、治療で症状を軽くしていくことはできます。

「人にかまってほしい」の根本

 このケースでは、その根本にある彼女の“人にかまわれたい”欲求が何に由来しているのか、カウンセリングの中で扱っていきました。  すると、彼女は一人っ子で「母親とは仲がいい」と言うのですが、実際は「母の言うことには逆らえない」状態でした。母の言うことを聞いてかまってもらえていれば安心なのですが、言うことを聞きたくなくても母に無視されるのが怖くて何も言えない。そういうときほど症状がひどくなるようでした。  Aさんは小さい頃、母親からものすごく可愛がられ、お人形のように育てられていました。しかし、中学、高校と次第に母の都合のいい労働力として働かされるようになります。  本人は母が喜ぶのがうれしくて手伝うわけですが、自分が洗濯やアイロン、炊事や掃除をこなす間、母は遊びに出ていることに気づき出す。母親がお土産を買ってきておしゃべりを始めると、その疑問を忘れてしまう。そんなことを繰り返していたようです。 「母はかまってくれているようで、自分の都合でしかかまってくれない。友達とも遊ばずに母のために働いても、いい子なら当然のようでした。それですごくさびしくなってしまった」  彼女が“さびしい”という感情に気づくまで、3か月くらいかかったでしょうか。それとともに母の言いなりではいたくないが、それをやめることもできない葛藤と向き合えるようになっていきました。  母の支配から脱するには、距離を置くことを考えるのはとても良いことです。ただ、何としても『母親離れをしなくちゃ』と意気込まないほうがよく、結婚は物理的に離れる自然なチャンスでもありました。 「あなたにはもうかまってくれる人がいて、お母さんと距離を取れ出しているから、症状を少しずつ減らせるでしょう」と伝えました。  症状は「毎日吐く」から1週間に1回程度に落ち着き、今は面接の間隔をあけフォローアップをしています。 <TEXT/木村メリッサ> 【袰岩秀章氏】 埼玉工業大学心理学科教授、カウンセリングルーム・プリメイラ代表。20年以上カウンセリングの現場に立ち、国内外で活躍。専門は集団精神療法。カウンセラー向け講座の講師を数多く務めており、新人育成にも力を入れている。 『母を許せない娘、娘を愛せない母―奪われていた人生を取り戻すために―』(ダイヤモンド社)
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