テイラー・スウィフト、女子からポップスの大御所までが熱狂する理由
5月5日、6日の東京ドーム公演を皮切りに「ザ・1989・ワールド・ツアー」をスタートさせるテイラー・スウィフト。そんな彼女にとって世界初の“公式本”『テイラー・スウィフト・ルールズ』が4月15日に発売されました。
というと力の入った重厚な作りを思い浮かべてしまいますが、これがA5サイズで全148ページとお手軽サイズ。写真もカラーがほとんどで、テイラー女子いちばんのお目当てのファッション解説に20ページもの分量を割くところは、さすが分かっていらっしゃる。全身で計35000円ほどのアイテムを、テイラーならどうコーディネートするでしょうか。
他にも元カレを含めた交友関係や人物相関図を眺めていると、そのままアメリカンセレブのお勉強もできてしまいそう。もちろん年表やデータ、ディスコグラフィといった部分にも抜かりはなし。硬軟取り揃えつつ、多くの人に開かれたムックになっているのはお見事。
※ファンを自宅に招いて。日本では『テラスハウス』のテーマ曲「We are never ever getting back together」で一躍有名になった
Taylor Swift – Acoustic Performances from RED Album
⇒【YouTube】http://youtu.be/2obMo7y-rvA
それでも誌面を引き締めるのは、やはり音楽についての記事。知っているようで意外と知らないテイラーに関する“そもそも”をおさらいしてくれます。
「カントリー・ミュージックの歴史とテイラー・デビューの背景」(文・五十嵐正)では、ハンク・ウィリアムスからロックンロールを経てポップス化したジャンルでのテイラーの立ち位置が論じられる。
<テイラー以前のカントリー界は、あくまで大人の世界だったのである。(中略)傷心、信仰心、家族愛、貧しい生活の嘆き、労働者階級の諦観、故郷の郷愁などであって、どれも大人の歌だ。>
そんな中「10代の少女の日々とその心情を描く自作曲」を歌ったことで新たなファン層を開拓し、地位を確立していったというのですね。同じように若くしてデビューを飾りヒットを飛ばしたリアン・ライムスとの比較もあって、テイラーのオリジナリティが浮き彫りになります。
しかしティーンエイジャーが歌の題材だからといって、ソングライティングそのものが幼いわけではない。数々の大物ミュージシャンからの賛辞がそれを証明しています。(「現代のアメリカン・スウィートハート~みんなが彼女に恋してる~」)。
そのメンツはそうそうたるもの。ビリー・ジョエル、ニール・ヤング、ジョン・ボン・ジョヴィ。スティーヴン・タイラーに至っては、彼女が所属するビッグ・マシーン・レコードと契約してソロアルバムまで制作するほど。
特にライアン・アダムス(※)とスティーヴィー・ニックスの言葉は印象的です。
「テイラー・スウィフトは、俺が知っている中では、最高に偉大なソングライターのひとりだ。以前同じ部屋に居合わせて、その場で彼女が作っていた曲を聴いたんだけど、信じられないくらいの素晴らしさでね。錬金術としか言いようがないよ」。
かつてエルトン・ジョンがカバーした名曲「Oh My Sweet Carolina」の作者が言うのですから説得力が違います。
スティーヴィー・ニックスはテイラーの本質をシンプルに言い当てます。
「この子はニール・ダイアモンドやエルトン・ジョンのように、世界中を歌わせる曲を書く」。
ファンを自宅に招いてアコギ1本で「We are never ever getting back together」を弾き語る姿や、何万もの観衆と大合唱になる「Fifteen」の映像を観れば納得の言葉でしょう。
※Taylor Swift – Fifteen
⇒【YouTube】http://youtu.be/Pb-K2tXWK4w
と、こんな具合に知りたい情報がコンパクトにまとまっているこのムック。音楽雑誌が健康だったころの華やかさと落ち着きが感じられる点でも、オールドファンの郷愁を誘う一冊かもしれません。
※ライアン・アダムス
Ryan Adams – Oh My Sweet Carolina
⇒【YouTube】http://youtu.be/rE4ISDUT4RM
<TEXT/音楽批評・石黒隆之>

テイラーの音楽の立ち位置は?
石黒隆之
音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)
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