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最大のテーマ“感情のコントロール”/中邑真輔インタビューVol.3【プロレス女子の手記・最終章】

――中邑選手がプロレスラーになったきっかけとして、「強い者への憧れ」というのが『中邑真輔自伝 キング・オブ・ストロング・スタイル』(イースト・プレス)に書かれています。

中邑真輔中邑真輔(以下、中邑):女性が多い家庭環境だったので、小学生のときは泣いて帰ってきたりすると、そのたびに母や姉からはボロクソ言われていました。なので女性的ではなく、男性的なものへ憧れていたというのはありますね。忍者に憧れ、ジャッキー・チェンにも憧れ、戦うという行為自体に憧れて、プロレスに出会い、プロレスラーに憧れたわけです。

中邑:その後、格闘技やアマチュアレスリングをやっていくんですが、学生のアマチュアスポーツですから、試合は何カ月かに一回なんです。それなのに試合のたびに心の消耗が激しかったんですよ。緊張だとか。練習ではプレッシャーがないからできることでも、試合になるとできないんです。普段通りにはいかない。酷いときだと吐いたりもする。なんて自分は情けないんだろうと思いました。

中邑:でもプロレスラーの人たちは、年間何試合しているんだろう? 年間130試合とか、ほぼ毎日試合をやっていると。この人たちのメンタルは、なんなんだろうと。プロレスの世界に入れば半強制的にそうなるわけだから、もしかしたら自分もそうなれるんじゃないか。慣れということも含めて、少しは心が強くなるんじゃないだろうか、というところですね。感情のコントロールというのが最大のテーマです、自分の格闘技において。

――今は感情のコントロールができるということですよね。

中邑:できる、とは言い切らないですけど。状況に応じて心のコンディションの持っていき方は分かるようになりました。デビューして間もないときは、どうしていいか分からないから、いろいろなことを試しましたよ。食事を変えてみたり、富士急ハイランドでFUJIYAMAを三周くらいしたり(笑)。似てるんですよ、試合前のドキドキ感と。すっげえ尿道が痛くなりました(笑)。

――FUJIYAMAで緊張は克服できたのでしょうか?

中邑:克服できなかったです(笑)。当時はメンタルコントロールの本とかも少なくて、あるにはあったんですけど、実地の体験じゃないから糞の役にも立たないなっていう。食事はベジタリアンになった時期もありますけど、それも一つのヒントにはなりましたね。無駄なことはなかったと思います。コンディションを作る上でもそうだったし、自分の体の特徴を知る上でも。みんな体に個性がありますから。トレーニングの方法でも食事でも。

――わたしもあがり症で、今はいい緊張で話せているんですが、ダメなときは本当にダメです。

中邑:何に対して恐れているのか、というのが分かればヒントになりますよね。僕の場合は試合においてですけど、まずは余計な情報を入れない。たとえば試合前に、相手の目すら見なくていいと思うんですね。何が目的かと言うと、あえて相手の目なんかを見て気持ちを盛り上げすぎない(笑)。試合は相手の変化に応じて自分がやってきたことを出すか出さないか、順応できるかどうか、という部分だから。結局は相手よりも自分なんですよ。相手はいても、自分と試合をしている。自分との約束を守れるかなんです。そういうことを意識し始めたら、試合が怖いというのもなくなってくるし。

中邑:あとはコンディションですね。「いい緊張」とおっしゃいましたけど、今もし二日酔いだったらそうはならないじゃないですか。昼、ラーメン二郎を食ってきたら、口の臭いが気になって喋れないかもしれない。それもコンディションですよね。そういう準備さえできていれば、体で感情をコントロールするということもできるし。逆に感情から体調を悪くすることもあるし。

――感情というお話だと、リングで戦っているとき、レスラーはどんな気持ちがするんだろう? と、いつも思うんです。

中邑:感情表現とは言いつつも、相手あってのことなので自分の自由にはなりません。それがうまく相手と噛み合うというか、自分の目指すものに近づけたときはすごく充実しますね。リングでは360度、人から見られているわけですよ。一挙手一投足を。タッグマッチで控えているところも、それこそ正面から見ている人もいれば、後頭部しか見えていない人、斜め上から、下から。その中で、自分がどうありたいかを意識します。どう振る舞いたいか。自分の所作によって、どういうプロレスラーであるかを、表現するというか、見せなきゃいけないというか。楽しいですけどね。

――リングに立つのは楽しいんですね! それでもきっと緊張はしますよね?

中邑:緊張という言葉すら違うものになっているんですよね。緊張したらしたで、「緊張してます」っていうのをより分かりやすく、見ている人に伝えようとします。それも生の感情だから。隠したら勿体ないかなっていう(笑)。毎回毎回、選手の表情も違ってくるんですよ。それが年間130試合となってくる。やればやるほどすごいなと思います。

⇒【後編】に続くhttp://joshi-spa.jp/258812

<取材・文/尾崎ムギ子 撮影/タカハシアキラ>

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