人生も障がいも楽しんだもん勝ち!【シングルマザー、家を買う/22章・後編】
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一拍おいて、「逆手?」と聞いた私に、レイくんのママはこう話してくれた。
「私もレイが自閉症だったとわかった時は絶望したよ。もう、この世の終わりかと思った。死ぬことまで考えたよ。だって、私が育てられなくなったら自閉症のレイはどうするの?
でも、もっと大変な障がいの人たちとたくさん知り合って、すごく楽しそうに生きている姿を見ていると、これはもう楽しむしかないと思うんだよね。っていうか、楽しんだもん勝ちだと思うんだよ。
『愛の手帳』も、もらえるもんはもらった方がいい。助成金だって助かるし、交通費はかなり楽になる。水道代だって基本料はタダになるし、たくさんサービスがあるんだよ! おかげで我が家はこの手帳でサービスが受けられる遊園地に行ってばっかりだよ(笑)!」
あぁ、この人はすごく強い。そうだった。障がいがあろうがなかろうが、息子は息子だ。はっきり言って、誰よりもかわいい。そんな最愛の息子が言葉を持たなくたって、意思疎通はできている。「好きだよー」というと、ぎゅっと抱きしめてくれる。それ以上何を求めていたのだろうか。
よし、逆手だ、逆手! 持ち前の切り替えの早さで、息子の障がいを受け入れた私は、“なんとかなる”と思うようにして、前だけを見ることにしたのだ。
だって、なんとかしかならないし!
将来のことばかり考えて真っ暗になるよりも、毎日を楽しんでその積み重ねが未来になる方が、絶対に幸せに決まっている。
当の息子本人はというと、誰よりも小さいのは変わらないが、2歳と1カ月で歩けるようになり、人見知りせず、誰にでもニコニコと愛想を振りまき、少し歩けば「かわいいねぇ」と言われ、アメやお菓子をもらってくる。
電車に乗れば、隣の人に笑顔を振りまき、思春期であろう中学生の男子にさえべったりとくっつき、幸せを振りまいている。お姉さんたちにはきゃぁきゃぁ言われ、知らぬ間にお姉さんたちのテーブルで抱っこされているということもしばしば。持ち前の愛くるしいビジュアルを武器に、誰からも愛される存在になっているのだ。
あれ……? 気付けばコイツ、だれよりも世渡り上手じゃないか! 息子をダシに、娘まで知らない人からアメをもらう始末である。
今は、いつか言葉がしゃべれるようになった時のひと言目が、楽しみで仕方ない。
私が死ぬまでにひと言聞けたら、嬉しいな! それが憎まれ口でないことを祈るばかりである。
<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)
※このエッセイは毎週水曜日に配信予定です。
人生も障がいも楽しんだもん勝ち!


- ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。
- 娘(8歳)。しっかり者でおませな小学2年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
- 息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず保育園では人気者
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)
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『シングルマザー、家を買う』 年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える! シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。 ![]() |