いきなりそんなに痩せたら死ぬ【シングルマザー、家を買う/24章・後編】
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最初のカウンセリングで2kgほどサバ読んで書いていた体重も見事にバレ(小さな見栄だ)、体脂肪率を測ると、驚くほどの記録を叩き出した。私史上、人生最高体重。そして見たこともないような体脂肪率。やるな、TANITA。
以前、某アーティストの事務所は、社員も体脂肪が20%を超えると、事務所に居られないという衝撃の噂を小耳にはさんだことがあった。その事務所にはたまに取材で行かせていただくが、このままの体脂肪だと、私はその事務所の敷居さえまたげない……。
しかし、人間というものは不思議だ。ある程度の羞恥心を乗り越えると、なぜか開き直りの境地が待っている。もう、知られてしまったサイズは仕方ない。
イケメンに測られているという事実を全身で受け止めると同時に諦め、自分の嘘偽りのないサイズと真正面から向き合うと、イケメンは優しくこう言葉をかけてくれた。
「吉田さん、目標は-14kgです(ニコッ)」
え……? 言葉を失っていると、イケメンはこう続けた。
「ここに来たからには、モデル体型である-14kgを目指しましょう。最低でも10kgは痩せたいですね。そうすれば、悩みは何もなくなるはずですよ(キラッ)」
……ん? 米2袋分かい? あまりの出来事に少し黙り、一生懸命頭の中の言葉をかき集め、私はイケメンに尋ねてみた。
「それは、あれですか? 10年計画ですか?」
するとイケメンは豪快に笑い、爽やかに返してきたのだ、「いや、2カ月です! 大丈夫です。吉田さんなら、できますから!」と。
このイケメンはいったい私の何を知って、できると判断しているのだろう。なぜ、こんなに断言してしまうのだろう。
……人間、いきなりそんなに体重落としたら死ぬわ!
いや、でも、これはチャンスだ。ピンチはチャンスだ! 14kg痩せたら、もう絶対に女子プロとは言われない。リングに立たなくて済むのだ。よし、やってみよう。こうなったらやってやろう!
そんな強い意志のもと、この日からイケメンとタッグを組んだ辛いダイエットが始まったのだった。
<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)
※このエッセイは毎週水曜日に配信予定です。
いきなりそんなに痩せたら死ぬ


- ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。
- 娘(8歳)。しっかり者でおませな小学2年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
- 息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず保育園では人気者
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)
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