素敵なファミリーは幻覚だ!【シングルマザー、家を買う/29章・後編】

⇒【前編】はコチラ 「あの~、娘さん、すごいほめ上手ですね」  すると、そのママや大きな目をこちらにむけて笑いながら答えてくれた。 「ホント、すでに太鼓持ちなんですよ……。そんなのやめなさいって言っているのに……」  やはり、太鼓持ちなのか! 3歳で! しかも、ママはそうやって育てた覚えはないらしい。なるほど、この太鼓持ちと言うのは、生まれながらの性格なのだな。  その後も少し雑談を交えていると、ママは、聞きづらそうな表情をして聞いてきたのだ。 「あの~、今日はもしかして、現状報告書を……」  私は「です!」と食い気味に答えると、それからは一瞬にして以前からの知り合いだったかのようにお互いの現状を報告し始めたのだ。

“シンデレラ”が結んでくれた縁

 どうして離婚したのか、今はどうやって暮らしているのか、保育園はどこなのか、どんな働き方をしているのか。本当に、同じ状況に身を置いているというのは、強い安心感と、絆を与えてくれる。  そこで連絡先を交換した。すぐに別れることになったが、もっと話したいという名残惜しい気持ちでいっぱいだった。  手を振り終えて一息つくと、足元に太鼓持ちの女の子が忘れていった靴下が一足あるではないか!  シンデレラか! シングルマザー、家を買う/29章・後編 ママ同士が連絡先を交換しても、2回目があることは意外と少ない。でも、これは確実に2回目を示唆している。そこで、「靴下、わすれていきましたよ~」とメールをすると「わ~! すいません! 来週ご飯でも食べましょう!」とつながることが出来たのだ。  こんなところでもきっかけを作ってくれる太鼓持ちの娘さん、きっと将来はいい子に育つはずである。

シングルマザー友達は尊い

 そして、初めてその親子と一緒にご飯を食べる日、同じく土曜日に最寄りの駅で待ち合わせをすると、父親が子を肩車した、広告のような素敵なファミリーが私たちの目の前を歩いていた。  それを見た瞬間、「あんな家族いるんだねぇ」とため息交じりでつぶやくと、彼女はとっさに私の目を覆い、こう答えてくれたのだ。 「騙されないで! あれは幻覚だから!」  そう二人で憎まれ口をたたき、大笑いしたのは3年前。あれから、ママ同士はもちろん、娘同士もとっても仲良くなり、一緒に旅行に行ったり、お泊り会をしたりと、親友のように付き合わせてもらっている。

太鼓持ちの親はリアクション王!?

 マイペースで少し天然な彼女といると、驚くほど本音を出せるし、気を遣わないで済む。性格的な相性もあるが、なにより、お互いが同じ状況にいるからだろう。  それに、彼女は帰国子女ということもあり、リアクションがいちいち海外の人のようにオーバーリアクションなのだ。リアルに「OH MY GOD!」と言う人間を間近で見たのも彼女が初めてである。マクドナルドの発音も、爆笑するほどネイティブ。小学生時代と思春期をがっつり海外で過ごした人のリアクションは、本当に面白くて、私にはツボなのだ。彼女といると、お腹を抱えて笑うことが本当に多い。  そんな彼女の姿を見ていると、娘さんのリアクションも、ママ譲りなことが理解できた。リアクションの大きなママの子のリアクションは、やはり大きくなるのだ(ママは太鼓持ちではないけどね)。  やっぱり、親子は似るんだな。  それにしても、シングルマザー同士の友達は、本当に、本当に、尊い。 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。著書『シングルマザー、家を買う』Twitter(@knysd1980
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