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痴漢にあった!私をスルーして旦那だけが…【ダーリンは女装家Vol.3】

 私の旦那さんは女装家です。

 普通のご家庭では、

「ねぇ、あなた最近太ったんじゃない?」

 ご主人の体重やあるいは、

「私、ちょっと太ったかしら?」

 ご自分の体型に気を配るのは妻の方が圧倒的に多いと思います。

 我が家の場合、

「ねぇ、私最近太ったみたい」

 と言い出すのは旦那さんです。

タマネギを胸にあててニッコリ



ミニスカート

写真はイメージです

 仕事柄、昼夜逆転したりするので多少体重が増えがちになるのは仕方がないのです。旦那さんの名誉のために(何度も、しつこく)言いますが、旦那さんは瘠せ形です。

 しかし。

「ミニスカートがきつくなったの!」

 こうなると死活問題(?)です。いよいよ妻の本領発揮。私だって女だぜ。ダイエット料理くらい心得ているさ。

 と、胸を叩くも、

「いつもよりタマネギを増やしてね」

 涼しい顔の旦那さん。そう、旦那さんはダイエットのエキスパートでもあるのです。

 食事前に生のタマネギを食べるだけで体重をコントロールしちゃうの。この簡単なダイエット法は、旦那さんと結婚してから我が家の定番となりました。

 しかし。

「ねえ、もっとタマネギを増やして」

「ねえ、タマネギは洗ったらダメだからね。生よ、生」

「ねえ、マヨネーズを使ったら本末転倒ってヤツじゃない」

 うるさいんだよ! 神経使ってこっちが瘠せちゃうわい。
「じゃあ、自分でやってよ! 私はダイエットなんて必要ないもん!」

 タマネギを丸のまま旦那様に突き出しました。すると何を思ったか、
「これ、胸のパットとして使えないかしら」

 胸にあてて笑ったのです。素直に謝るのが苦手なんだなあ。こういうところは男なんだから。

 かくして無事にウエイトコントロールが完了した旦那さん、さっそくミニスカートをはいてお出かけです。

「やっぱりさ、お気に入りの服を着て出かけるのってウキウキするよねぇ」

 メイクもバッチリ、うれしそうな旦那さんを見ているとこっちもうれしくなってきます。

「そうだねぇ。もう夕食の支度もお掃除も終わったし」

 旦那さんのウキウキ度に比例して、私の家事能力もあがるってもんです。

痴漢にあって、どこか嬉しそうな旦那さん



「え~、美樹ちゃん、その顔と服でお出かけぇ?!」

 悪かったよ!

 でもいいのです。私の女っぷりなんか、薄っぺらだもの。

 昼下がり、電車に乗って気まぐれ旅。下車したとたんに、旦那さんが不機嫌顔。

「どうしたの?」

「痴漢よ、痴漢に遭ったのよ!」

「え?」

私ではなく旦那さんが?

痴漢にあったダーリン「ったくもー。人の尻をベタベタベタベタ触りやがって」

 怒り口調とは裏腹に、ミニスカートをはきこなした腰はどこか自慢気。

「なんで女の私じゃないの?」

「美樹ちゃんが痴漢に遭わなくてよかった!」

 ひしっと私を抱きしめつつも、顔は優越感にあふれているんですけど。

「やんなっちゃうなぁ、痴漢なんて」

 なんだかとってもうれしそうなんですけど。

「……もうちょっと、お化粧しようかな……」

 つぶやいた私に、

「いいんじゃない、別に。それで」

 って。おい!

 明日から脂肪たっぷり、炭水化物たっぷりのメニューにしてやろうか。

 余談ですが、旦那さんは料理もとても上手です。本格的な中華も和食も作れちゃう。女装家としてのたしなみ? かどうかはわかりませんが。

 この話はまだ別の機会に。

<TEXT/森美樹 イラスト/尾山奈央>

【森美樹】
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)を上梓
https://twitter.com/morimikixxx




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